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(写真・神奈川新聞社)

子どもの貧困をさまざまな視点で提示した「貧困児童」(創英社/三省堂書店)が刊行された。著者の沖縄大学名誉教授の加藤彰彦さん(74)=横浜市栄区=は「国内では6人に1人の子どもが貧困に陥っている。一人でも多くの人に一緒に考えてもらいたい」と呼び掛ける。

 

厚生労働省の2012年「国民生活基礎調査」によると、「子どもの貧困率」は16.3%。本書で加藤さんは「私たちの暮らしは『貧困化社会』へハッキリと突入している」と警告する。

 

「子どもの貧困脱出は社会全体にとっても大切な課題」とする。そのために求めるのが保育所、幼稚園の無償化、学用品など義務教育に必要な費用の全額無償化だ。

 

生活保護受給の基準を満たしながら8割以上が受給していない現状を挙げ、100%受給できるような体制の整備も提案。就労扶助制度、教育扶助拡大の必要性を訴える。孤立しがちなこうした世帯が「生活再建や将来の展望を持てるようになり、周囲の人々も声を掛けやすくなる」とみる。

 

同市中区の寿地区でソーシャルワーカーとして長年勤務した経験が大きい。簡易宿泊所街で出会った子どもたちを通じて、「一対一で話せる場と人を子どもたちは求めている」と感じた。昨年2月の川崎市立中学1年の男子生徒殺害事件でも、被害者が孤立に陥った背景に貧困を指摘する。

 

検証の視点は多角的だ。スクールソーシャルワーカー増員などの国や自治体の施策、関連するデータ、法律、教育論も引用。大和、川崎市内での就学援助や鎌倉市内での市民や大学生が子どもたちに寄り添う取り組みなども紹介し、「子ども食堂」や「フードバンク」の活動にも期待を寄せる。

 

加藤さんは「今の子どもが置かれている厳しい実態を知ってほしい。貧困に陥っている子どもに気付き、寄り添い、支えてもらいたい」と本書に込めた思いを語る。

 

B6判変型310ページ。1,200円(税別)。全国の書店で販売中。

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