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4年間の収録を振り返り、「後世に引き継ぐ思い、責任が芽生えた」という宮沢和史=沖縄市(写真・琉球新報社)

音楽家で元ロックバンドTHE BOOM(ザ・ブーム)の宮沢和史が沖縄民謡の歌い手を訪ね、4年かけて民謡245曲を収録したCD「沖縄 宮古 八重山民謡大全集(1) 唄方~うたかた~」を発表する。最終的な編集作業に取り組んでいる宮沢は「ぜいたくな4年間だった。記録して後世に残していく決意と責任をあらためて感じている」と言葉に力を込める。

 

宮沢が「次世代に伝えたい」との思いで収録した民謡を14枚組のCDに収録する。寄付金600万円を集めて750セットを作り、県内の図書館や学校、県外や海外の県人会など500カ所に配る計画となっている。

 

登川誠仁「ナークニー」や金城実「PW無情(PW節)」、大城美佐子・よなは徹「すみなし節」など幅広い年齢層の歌手230人の歌声を収録する。下地イサム「伊良部トーガニー」や宮良康正「とぅばらーま」など、宮古・八重山に伝わる民謡のほか、花城英樹「下出述懐節」やよなは徹「仲風節」といった古典曲も含む。

 

「民謡は昔からある伝統音楽と思いがちだが、そうではない。マルフクレコードが大阪で立ち上がり、民謡人気に火が付いて、ラジオなどメディアの発達でも新たな民謡が生まれ、歌い継がれてきた」と話す。

 

その上で、昔歌を知る民謡歌手が高齢化している現状から、沖縄の民謡を残していく必要性を感じていったという。契機になったのは2011年に発生した東日本大震災だ。多くの人が犠牲になったことに触れ「思っていたこと、やりたいことを今行わなければ、一瞬でできなくなる可能性がある」と行動に移すことを決めた。登川をはじめ、津波恒徳、照屋寛徳など、大御所の民謡歌手の曲を録音することから始めた。

 

「収録活動をしていくうちに若手の歌い手、地域の集まりで先頭に立って歌う小さい子どもの歌い手の才能に気付いた」と話す。「ベテランはもちろんだが、若手の曲も収録したい」と7歳の田島あやなの曲も収録した。

 

「音の教科書」として後世に残すことを目標にしている。「50年後、100年後に聴いて唄を覚えてもらえるようなものにしたかった」という。「工工四は資料として今後も残ることになるが、歌い手の気持ちや息遣いなど、工工四だけでは伝えられない部分を音声で記録したかった」と語った。

 

◇     ◇

 

収録曲の内訳は本島地方167曲、宮古38曲、八重山40曲。県民に広く親しまれた民謡や古典曲を網羅した。

 

製作費捻出のため、民謡の記録と伝承を目的とした「唄方プロジェクト」(平田大一代表)を設立し、支援を募っている。非売品だが、同プロジェクトの寄付者に1口(2万5千円)につき、1セットを贈呈する。約140ページの宮沢が執筆した解説書、歌詞付き。申込終了日は10月初旬を予定。詳細は「唄方プロジェクト」のフェイスブックで随時更新。問い合わせはutakataproject@gmail.com。

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