手を使わずに来場者の指に指輪をはめたMASAさん(右)=7日、那覇市のロワジールホテル那覇(写真・琉球新報社)
世界を視野に、10年以上地道に磨き続けた技が認められた-。世界中のマジシャンが集まる米国ロサンゼルスの通称「マジックキャッスル」の審査に今年2月、マジシャンのMASAさんが県内出身者として初めて合格した。
中学2年の時にマジシャンのセロさんのクローズアップマジックを目の当たりにして以来「毎日マジックの練習をしている」というMASAさん。「世界中で披露したい」と、今も技を磨き続けている。
「奇術の殿堂」と言われ、世界中からマジシャンが集まる「マジックキャッスル」は、館内を見学するにも会員の紹介が必要。MASAさんは同館で日本人唯一の審査員経験者、柳田昌宏さんを通して昨年8月に同館を訪れ、2月に受験した。
審査員は世界屈指の4人のマジシャン。MASAさんはカードの下に隠したコインを次々と瞬間移動して見せたが、審査員の反応はいまひとつ。二つ目のマジックを披露し終えると「ストップ」と止められた。「そんなに下手だったのか」と肩を落とした瞬間、「合格」と言い渡された。「自分のマジックは世界でも通用するんだと安心した」。
中学からマジックの動画を何度も見返し、独学で学んだ。高校卒業後は米国の大学へ留学。留学中にレストランやパーティー会場でマジックを披露した。
当初は英語を聞き取れず、友人をつくれなかった。しかしマジックを見せるとすぐに人気者に。だが不安もあった。「マジシャンとの出会いがない」。自分の実力を他と比較することができず悶々(もんもん)としていた。「マジックキャッスルで憧れのマジシャンたちがマジックを披露している光景を見て、勝負したいと思った」。決意を胸に、憧れの舞台に足を踏み入れた。
16年2月に帰沖。単独のマジックショーを開いたりイベント会場で披露したりしている。
8月末、ずっと背中を追い続けてきたセロさんと面会する機会ができた。中学の頃から必死に練習してきたセロさんのたばこを使ったマジックを本人の前で披露すると、セロさんは「自分はもうこのマジックをしなくていいね」と笑った。後日、MASAさんがフェイスブックにアップしたツーショット写真には「憧れの存在からライバルに変わった瞬間」という言葉が添えられていた。
(嘉数陽)