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映画鑑賞を通した学生の学びに連携して取り組む野入直美准教授(左)と宮島真一さん=沖縄市のシアタードーナツオキナワ(写真・琉球新報社)

 

【沖縄】カフェで映画を楽しむカフェシアターと大学が“コラボ”したユニークな「学び」が始まっている。仕掛け人は琉球大学法文学部人間科学科の野入直美准教授(社会学)と、シアタードーナツオキナワ(沖縄市中央)を運営する宮島真一さんだ。さまざまな社会問題や人間の生きざまを描いたドキュメンタリー映画を鑑賞し、感想を報告することを授業の出席点として扱う。学生に自身と社会との結び付きを考えるきっかけを与え、社会課題に対する能動的な姿勢を養う。

 

映画鑑賞は社会系科目「現代社会のしくみ」で、2015年度後期から始めた。きっかけは同年7月に、野入准教授が大阪朝鮮高級学校ラグビー部の奮闘を描いた「60万回のトライ」をシアタードーナツで上映したこと。在日朝鮮人を取り巻く社会情勢などを考えるトークイベントも開いた。

 

学生は推薦映画を見て学内システムで感想を報告する。15年度後期には87人が受講、ウェブ上に計102の書き込みがあった。16年度は前後期で計207人が登録した。

 

これまでの推薦映画は、元受刑者とHIV(エイズウイルス)陽性者が自らの人生を芝居で表現する米国の劇団を追った「トークバック~沈黙を破る女たち~」や、服の価格を安く抑えたファストファッションの裏に潜む発展途上国の人々や環境に与える問題を描いた「ザ・トゥルー・コスト~ファストファッション 真の代償~」など。

 

トーク-では学生から「差別や偏見は無知が原因だと感じる。HIVだけでなく、他の差別問題もなくなるよう、私も知識を付けたいと強く思った」、トゥルー-では「私たち消費者は消費によって誰かに害を与える立場にいる。自分の立場を認識し、解決に向け取り組める人になりたい」などの感想があった。

 

野入准教授は「世の中には自分と関係ないことは一つもない。どんな問題でも、自分から関わることはできる。映画を見て『面白かった』だけでなく、感じた問題意識を発信し、社会を変えようとする姿勢を養ってほしい」と語った。

 

宮島さんは「見た人が次のステップにつなげられるような内容の映画を選んで上映している。豊かな人生づくりの応援をしたい」と力を込めた。

 

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