沖縄国際大学経済学部の友知政樹教授(写真・琉球新報社)
沖縄国際大学経済学部の友知政樹教授は22日までに、米軍嘉手納基地が返還された場合の県経済への効果について、跡地利用が進んで生み出される「直接経済効果」が年間約1兆4600億円になるとの試算をまとめた。県が「嘉手納より南」の基地返還に伴う経済効果の算定で用いた計算式を当てはめて試算した。経費などを差し引いた「粗付加価値額」は約8220億円になるとした。
県は「嘉手納より南」の基地返還後の経済効果について、リゾートコンベンション産業や文化産業などを整備することを前提に計算した。友知教授はこの式を嘉手納基地に当てはめ、基地が所在する3市町それぞれの地価と掛け合わせた。
3市町は嘉手納基地の具体的な跡地利用計画を策定していない。
そのため、沖縄市、嘉手納町は県が試算したキャンプ瑞慶覧の返還効果(1ヘクタール=6・98億円)、北谷町はキャンプ桑江の返還効果(同4・95億円)を適用。1ヘクタール当たりの返還効果の数値と地価換算係数、嘉手納基地の面積1985ヘクタール(沖縄市742・5ヘクタール、嘉手納町879ヘクタール、北谷町363・5ヘクタール)を掛けて自治体ごとに経済効果を出し、これを足し合わせた。
嘉手納弾薬庫は林間地域で跡地利用の効果が限定的と考え、積算には含めていない。
友知教授は「あくまで基地問題は平和や人権の問題であり、経済効果があるから基地を返還した方がいいという論理ではない」と指摘した上で、「基地の存在による経済損失は行政が主体になって数値を出して議論をリードしてほしい。SACO合意以外の基地も『返ってこない』と決めつけず算出してみることが大事だ」と強調した。
友知教授はこれまでに「全基地撤去および全補助金撤廃後の琉球(沖縄)経済に関する一考察」として、県内の米軍施設と自衛隊基地を含めた試算を論文で発表している。
全基地撤去により3兆8426億円の直接経済効果が生み出されると算出し、そのうちSACOで返還合意されている基地以外が2兆9526億円としている。