契約農家が収穫し、運搬してきたリュウキュウアイを管理する仲西利夫さん。かめでは葉を水に漬け込んで発酵させ、藍の色素成分を抽出している=5月31日、本部町伊豆味の琉球藍製造所(写真:琉球新報)
芭蕉布や宮古上布、琉球絣など、県内のさまざまな伝統染織に欠かせない染料の琉球藍が不足し、沖縄の工芸振興に影を落としている。原因は台風による塩害などの気象要因や農家の高齢化で、原料となる多年草「リュウキュウアイ」の収量が激減したことだ。琉球藍の県内生産量の9割以上を占める琉球藍製造所(本部町伊豆味)では過去2年、県内需要の目安とされる4トンの3分の1ほどに生産量が落ち込み、昨年は出荷調整を余儀なくされた。
リュウキュウアイの収穫期は5~6月と10~11月の年2回。日陰を好み、日光や高温に弱いため、栽培場所は山あいの斜面が多く、育成には豊富な水が必要とされる。葉は水に漬けて発酵させるなどして「泥藍」と呼ばれる状態に精製し、織物産地に出荷される。
激減の発端となったのは近年、本島北部地域を襲った雨が少ない台風だ。海から吹き上げられた塩が雨で流されず、山あいのリュウキュウアイ畑を直撃し、生育を阻害した。2年前の梅雨が短期間だったことも収量を押し下げる要因にもなった。
琉球藍製造所では、琉球藍の不足分は前年までの在庫を切り崩して出荷していたが、昨年1月に底を突いた。契約農家も高齢化で現場を退く人が相次ぎ、昨年の生産量は約1.4トンにまで落ち込んだ。同製造所では需要が高かった1970~80年代には年間約7トンを出荷していた。
同製造所を運営する仲西利夫さん(64)は「昨年は取引年数の長い所から優先的に出荷せざる終えなかった」と振り返る。今年は農家の後継者を探したり、農地を増やしたりして、3トン超の確保を目指している。
宮古島市や多良間村で製造される宮古上布は深い藍色が特徴で、多くの琉球藍が使われる。宮古織物事業協同組合の神里佐千子専務は「生産者は藍不足に苦心している。注文に対し、織物の出荷も待ってもらっている」と厳しい現状を訴える。(長嶺真輝)