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「なじみの客がいるから辞められない」―。

 

沖縄県うるま市石川の住宅地で、60年変わらぬ場所に店を構える「大城理容館」。赤青白の三色のサインポールが描かれた扉を開けると、今年カジマヤーを迎える大城平光さん(96)が出迎えてくれる。市石川で理容室を始めて60年余り。

 

「人生いろいろあるよ。こんな長生きするとは思ってなかった」。開店当時からほぼ変わらぬ道具を愛用し、大城さんは今日も笑顔で常連客を出迎える。

 

今帰仁出身の大城さんは戦時中、南洋での飛行場建設に駆り出された。現地で病にかかり、約1年半で帰国。その後は名古屋や満州などに派遣され、満州で終戦を迎えた。戦後、今帰仁に戻って来たが、妻と4人の子どもを養うため生活は厳しかった。

 

33歳の時、理容師の見習いとして市石川(旧石川市)に移り住み、店を構えた。従業員も3人雇うほど大盛況だった。

 

なじみ客は現在、20人程度。1日1、2人が店に足を運ぶ。大城さんは、長年ひいきにしてくれる利用者のため20年以上1人で店を守っている。

 

9月には、地域の敬老会でカジマヤーの表彰状を受け取った。市石川中央区自治会の石川稔会長(60)は、大城理容館を「この辺に住んでいる人なら知らない人はいない」と話す。

 

「私の父も通っていた。話も面白くて、怒ってる顔を見たことがない」と、話す。大城さんが自転車に乗って地域を走る姿を見かけるといい「元気で、自分からあいさつや声掛けをしてくれる」と人柄を語る。

 

理容館入り口正面のテレビ前に設置された深緑のソファが大城さんの定位置だ。「なじみの顔が入ってくると、もう神様みたい」と目尻を下げる。

 

「客がいる間は頑張らないとね」。大城さんはソファに腰掛け、顔なじみの来訪を待っている。(上江洲真梨子)