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ニコルソン四軍調整官

 

米タイム誌は毎年恒例の「今年の人」に、性的嫌がらせや性暴力を告発した人を選び、「The Silence Breaker(沈黙を破った人たち)」と名付けた。表紙には、ハリウッドの大物映画プロデューサー、ハーベイ・ワインスタイン氏のセクハラ疑惑を実名で告発した女優アシュレイ・ジャッド氏をはじめ、勇気ある行動を起こした、さまざまな立場の女性たちが並ぶ。

 

ソーシャルメディアでは、「#MeToo(私も)」と被害を訴えるうねりが起きた。米連邦議会でも民主、共和両党の議員3人がセクハラ行為を認め、辞職表明するなど、政治やメディア界の権力者が相次いで職を追われる動きも広がる。

 

この動きは変化の兆しであると共に、力関係を利用したセクハラや性暴力が長年、いかに社会全体にまん延しているか、どれだけ多くの人が被害に苦しんでいるかを示す。

 

友人とこの話題になった時、彼は語った。「昔、自分を助けてくれた友達が、実は知人の女性にセクハラを繰り返していた。僕は後で知ったが、友達に『やめろ』と言えなかった。自分の行動を変えるべきだったと思う」。こうやって「自分」に置き換えて考えることのできる男性が増えなければ、本当の意味で社会は変わらないだろう。

 

一方、権力の座にいる男性は「仲間」を擁護しようと、真実を見る目が曇るようだ。在沖米軍トップのニコルソン四軍調整官は、部下の大佐のセクハラ行為を知りながら、海兵隊の上層部や司法関係者に適切な報告をしていなかった。

 

この大佐がオーストラリア赴任わずか10日間に起こした行動がひどすぎる。部下に強要してその妻の裸の写真を送らせたり、女性士官にわいせつなメールを送り付けたりと枚挙に限りがない。多量飲酒を繰り返し、飲酒運転をしていた疑いもある。だが、大佐は「個人の問題」「冗談」と自分のやったことを正当化しようとしていた。

 

海兵隊監察官の報告書によると、ニコルソン氏は大佐と面談し、こう尋ねた。「何が起こったんだ(What happened?)」。「君は何をしたのか?」ではなく「何が起こったんだ?」。あまりに当事者意識の低い質問だ。

 

被害の申し立ての信頼性を疑っていたニコルソン氏は、大佐との面談は「証拠を求める、というよりもカウンセリング(相談)だった」と認めた。その後、大佐は米本土の基地で6歳の女児を性的に虐待した。問題に対処しなかった結果が、幼い被害者を生んだ。

 

力のある者が、力のない者を虐げる。加害側は自分の行動を正当化し、「仲間」を守りたがり、被害側の声に耳を貸さない。その暴力を「見て見ぬふりをする人」たちが新たな被害を生む。性暴力と軍隊。「権力」を利用して暴力を生み出す社会構造の根っこはつながっている。