当選確実を受け、報道陣に囲まれて取材を受ける渡具知武豊氏(中央)=4日午後10時34分、名護市大南の選挙事務所
沖縄県の米軍普天間飛行場の名護市辺野古移設が最大争点となった4日投開票の名護市長選で、移設を推進する政府与党に支援を受けた渡具知武豊氏(56)が移設阻止を掲げた稲嶺進氏(72)を下し、初当選した。政府は2017年4月に護岸工事に着手して以降、工事を推し進めている。渡具知氏が当選したことで政府は工事をさらに加速させそうだ。
辺野古新基地建設を推進する政府の支援を受けた渡具知武豊氏が当選したことで、国は「名護市民は新基地を容認した」とけん伝し、工事を一層加速させてくると思われる。これまで、地元の民意を根拠に辺野古新基地建設阻止の方針を掲げていた翁長県政は厳しい状況に追い込まれる。衆院選など各種全県選挙で辺野古新基地建設反対の民意が示されていることから、知事は引き続き辺野古新基地ノーを堅持する見通しだが、その実現への戦略は見直しを迫られそうだ。県知事選への翁長氏自身の動向も注目される。
渡具知氏は選挙期間中、辺野古の新基地建設の是非の明言は避け「(県と国の)裁判の行方を注視する」と述べるにとどめてきた。しかし、基地受け入れが条件とされる再編交付金については「特段断る理由はない」などとし、受け取る意向を示している。
再編交付金の受け取りと新基地建設反対が両立し得ないことを考えると、渡具知氏が近く辺野古新基地「容認」の姿勢を示す可能性が高い。名護市長は美謝川の水路切り替えなど工事を進める上での許認可を有しており、市長判断が基地建設の進展に大きな影響を与える。
県は今後、これまでの全県レベルでの選挙で新基地建設ノーを掲げる候補が当選しているという事実や護岸工事着手に際し、度重なる県の行政指導を無視し工事を進める国の対応などを根拠に新基地建設反対の理論武装をしていくとみられる。埋め立て承認の撤回やそれに関連する県民投票、秋の知事選など重大局面が続く。(仲井間郁江)