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新緑に覆われた本島北部のやんばるの森=国頭村大国林道

 

奄美大島、徳之島、沖縄本島北部、西表島の世界自然遺産登録について、国連教育科学文化機関(ユネスコ)の諮問機関である国際自然保護連合(IUCN)は4日未明、「登録延期」を勧告した。今夏に登録される可能性が低くなったことで、登録を推奨する勧告を想定していた国、県、地元町村に動揺が広がった。米軍北部訓練場跡地の自然遺産候補地への統合など、多くの課題が改めて浮き彫りになった。

 

「奄美・琉球」の世界自然遺産登録に向けた環境保全を巡り、体制づくりの遅さはかねてから指摘されていた。しかし政府や県、地元町村も課題に正面から向き合わないまま、登録に期待をかけてきた印象は否めない。北部地域では、国立公園化や世界自然遺産登録の動きは「ヘリパッド(ヘリコプター発着場)の完成が、国立公園組み込みへの条件だ」(自民党関係者)と言われ、政治色も強かった。

 

政府は2016年9月に国頭、大宜味、東村の一部を「やんばる国立公園」に指定した。17年末に来県した菅義偉官房長官は返還された約4千ヘクタールを「18年中に国立公園に盛り込む」と明言。菅氏と面談した宮城久和国頭村長は「その後は世界自然遺産登録ができるよう特段の配慮をお願いしたい」と求めた。政府には、地元の負担軽減に尽力した結果、国立公園に指定し、世界遺産にも登録されたとアピールする狙いがあったとみられる。

 

環境省は4日未明の会見で「北部訓練場がマイナスの評価を及ぼしたと考えていない」との見解を示した。県も、世界自然遺産登録をテーマに、これまで開いてきた県主催のシンポジウムで米軍北部訓練場にはほとんど触れず、IUCN勧告後も環境省同様に「マングース駆除など基地内での外来種対策が評価されている」などと、北部訓練場の影響には否定的だ。

 

しかし、北部訓練場を巡っては、米軍が枯れ葉剤を使用したとの証言があるが、調査や検証は行われていない。北部訓練場と登録推薦地が隣接することは、推薦地と周辺地域の間に緩衝地帯を設けられない欠点にもなっている。返還跡地から米軍のごみも多数見つかっているが、放置されたままだ。

 

ノネコによる希少種の捕食対策については、奄美大島が条例違反者への罰則規定を設けたのに対し、やんばる3村は条例での罰則規定は設けずに飼い主の努力義務にとどめている。IUCN勧告は、奄美の取り組みを評価し、他の地域にも同様の対策を広げるよう求めている。

 

地元の村役場幹部の一人は「環境省も登録される見込みだと地元に期待を持たせていた。危機感を持って課題を厳しく指摘してくれていたら、村も一緒になって動けたはずだ。我々も詰めの甘さを指摘されても仕方がない」と肩を落とした。(阪口彩子、清水柚里)