サッカー日本代表は19日、ワールドカップ(W杯)1次リーグ初戦のコロンビア戦を迎える。負傷の影響で先発は微妙な状況だが、攻守のつなぎ役として期待がかかるのがJ1川崎フロンターレのMF大島僚太選手(25)だ。無名だった静岡学園高校時代に才能を見いだしたのは、同高の先輩でもある川崎の向島建スカウト(52)だった。
◆運命変えた出会い
偶然の出会いが大島選手の運命を変えた。2010年10月、東京・国立競技場で行われた高円宮杯全日本ユース選手権準決勝。母校の応援に訪れた向島スカウトの目は、抜群のボールテクニックを持つ10番にくぎ付けになった。
「ボールを持ったときのターンがスムーズだし、重心もしっかりしている。彼のプレーにわくわくしてずっと集中して見ていました」。夏の全国高校総体は出場機会がなく、他クラブも含めてノーマークの存在。川崎はその年すでに新卒5選手の獲得を決め、それ以上の補強は行わない方針だったが、向島スカウトの熱心な働き掛けでテスト生としての練習参加が実現した。
大学に進学したらサッカーをやめるつもりだった大島選手も、突然開かれたプロへの道に「挑戦してみたい」と迷わず飛び込んだ。
◆母校初のW杯選手
大島選手の人間性も向島スカウトの心をつかんだ。インターネットの静岡学園高サッカー部のページに「自分たちは力がないから、普段から細かいことに気が付かないと試合に勝てない」と仲間に学校周辺のゴミ拾いを呼び掛ける大島選手の書き込みを発見。入団後の寮部屋もしっかりと整理整頓されていた。「洗濯物をきちんと畳んでいたり、普段からしっかりやっている選手は試合に向けてもちゃんと準備していますよね」と目を細める。
8年前、偶然見つけた原石がW杯という最高の舞台に立つことはまさにスカウト冥利(みょうり)だ。これまで70人以上のJリーガーを生んできた静岡学園高だが、W杯プレーヤーを輩出するのは初となる。
「正直ここまでになるとは思わなかった。(OBの)カズも落とされたから、すごいなあと。試合に出て前線の選手を操るところを見てみたいですね」と後輩の活躍を待ちわびている。<split>