姉の里帆さん(左)の「お下がり」のランドセルを大切に使い続けてきた玉城花菜さん。家の軒下で、ランドセルをぎゅっと抱きしめた=6日、糸満市糸満 画像を見る

 

【糸満】12年間、ありがとう―。糸満小学校6年生の玉城花菜さん(12)が抱きしめるのは赤いランドセル。ところどころに見える塗装のはがれが見えるがきれいなランドセルだ。姉の里帆さん(19)が6年間使った「お下がり」で、姉妹合わせて12年間使ってきた。ランドセルを大切に扱ってきた花菜さんは「みんなより長く持てたのは、いいことだと思う」と笑顔を見せる。

 

花菜さんは5人きょうだいの4人目。里帆さんの卒業時、1年後に小学校に上がる花菜さんに、母の千里さん(47)が同じランドセルを使わないかと声を掛けた。長女のランドセルを、東日本大震災の被災地でランドセルを無くした子どもに送った経験もあった。

 

「お姉ちゃんのランドセルは嫌だった。本当は新しいものが良かった」。1年生に上がる時にはそう思っていた花菜さんだが、なかなか本心を言えず、姉の「お下がり」を受け取った。

 

小学校に上がってみると「あんまりみんなの物と変わらない」と、気にしなくなった。むしろ「きれい」と周りに言われ、大切に使うようになったという。

 

「ランドセルは床に置いたら駄目。勉強する大切なものだから高い所に置きなさい」。千里さんは子どもたちに伝えてきた。自身が子どもの頃にそう言われて育ったからだ。

 

母の教えを守っているうちに、自然と大切に扱うことが当たり前になった。「ランドセルを投げたり上に座ったりする人もいるけど、それはできなかった」という花菜さんの言葉に、里帆さんもうなずく。

 

千里さんは「物にあふれて何でも買える今だからこそ、物を大切にすることを学んだと思うし、将来の誇りになると思う」と話した。

 

「私のお下がりで嫌じゃないかなと気になっていた」という里帆さんも「6年間使っていてすごいと思う」と、妹をたたえた。

 

4月から糸満中学校に通う花菜さんは「中学校では勉強を頑張りたい」と意気込む。卒業式は20日。ランドセルを背負うのもあとわずかだ。

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