水を畑にまくのが怖い」と語る具志堅興盛さん。左の蛇口は簡易水道用だが、今は手洗いなどでしか使っていない=2月、宜野湾市喜友名の自宅庭 画像を見る

 

【宜野湾】国内では使用が原則禁止されている有機フッ素化合物(PFOS・PFOA)が米軍普天間飛行場周辺の湧水などから高濃度で検出され続け、宜野湾市民に不安を与えている。米軍が基地内調査を拒み、改善の兆しはない。発覚後、農作物に湧水をまくのをやめた市民も。市議会では原因究明や浄化に向け、市に日米への働き掛け強化などを求める声が上がる。市内の動きを追った。

 

普天間飛行場周辺の調査は2016年度から県が年2回実施し、毎回基地の下流側でより高濃度が検出されている。過去に飛行場で使われていた泡消火剤に含まれていたため、県は「普天間飛行場から流入した可能性が極めて高い」との見解を示す。

 

PFOS・PFOAは発がん性のリスクが指摘される。国内での環境基準値はないが、米国では飲料水中の生涯健康勧告値を1リットル当たり70ナノグラムとしている。市内では同値を大きく上回る濃度が頻繁に検出されており、昨年8、9月の調査では市喜友名の湧水「チュンナガー」で1リットル当たり2千ナノグラムを検出した。ただ県は「直接飲用に用いなければ、人の健康に問題はない」としている。

 

■大丈夫と言われても…

「いくら大丈夫と言われても不安になる。孫に作った野菜をあげられない」

 

そう声を落とすのは、市喜友名の自宅庭で40年以上、約20種の農作物を栽培する具志堅興盛さん(85)。戦前から「チュンナガー」を往復して水を確保していた同地区では1957年、区民総出で「ガー」から簡易水道を引いた。関係者によると、今でも100世帯以上が活用する。

 

しかし3年ほど前にPFOS・PFOA汚染が発覚した。具志堅さんは散布をやめ、今では農機具や手を洗う時にしか使わない。具志堅さんは「汚染の除去は米軍や防衛省がやるべきだ。市や県ももっと強気に求められないのか」と訴える。

 

市の特産品、田芋の産地である大山地域の湧水からもPFOS・PFOAは高濃度で検出され続ける。16年に県が1度実施した調査で田芋自体からは検出されなかったが、風評被害に対する地域の懸念は根強い。

 

約20年にわたり田芋を作る男性(55)=市大山=は「基準値は関係なく、毒性なのは間違いない。米軍が除去すべきだ」と憤る。県に対しても定期的に田芋の調査をして結果を公表したり、使う湧水を1カ所で集約して浄化したりする対応を求め、風評被害の一掃を訴える。

 

■「宜野湾市は当事者意識を」

市議会では、市の対応を巡って定例会のたびに質問が相次いでいる。「もっと米軍に要請して元の水に戻してほしい」「自ら実態調査をすべきだ」など対応の強化を求める声が上がる。

 

それに対し市は、県が国と米軍に対して関係機関による調整の場を設定することを求めていることを念頭に「当該要請の推移を注視したい」との答弁を繰り返す。米軍との会合でPFOS・PFOAに関する情報提供を求めたが、原因については「蓋然(がいぜん)性の域を出ないため、原因を特定することは困難」との認識を示し、普天間飛行場由来の可能性には言及していない。

 

また昨年12月、市は喜友名区自治会から汚染に関する説明会を求められたが、調査主体が県であることを理由に開催しなかった。同区理事で、市議の知念秀明氏(45)は「区が米軍や国に直接訴えることは難しい。もっと市民に寄り添ってほしい」と訴える。

 

昨年10月に「宜野湾市の当事者性を問う」と題した意見書を市に提出した調査団体インフォームド・パブリック・プロジェクト(IPP)は、専門家や市民と協議した上で、汚染範囲の確定を含めた実態調査の実施や適切な基準値の議論を始めることを求めている。

 

河村雅美代表は「蓄積された汚染が基地外に染み出ているので、なるべく早く対処すべきだ。今後の跡地利用があるからこそ、市も米軍に要請し、基地の中で対策するしかない」と指摘。汚染調査については「安全と言うのであれば、市や県はそれだけの調査をしないといけない。大山の田芋も県は1回しか調査しておらず、十分と言うには程遠い」と批判した。
(長嶺真輝)

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