タイワンキンギョ(方言名:闘魚、トウギョ、トーイユ)のオス。全長4~7センチ。方言での呼び名の由来は気性が荒く、縄張り争いなどを激しく行うことから。明治・大正時代までは、首里などに「トーイユオーラセー」(飼育しているタイワンキンギョの決闘)が盛んに行われたそう。一般的な魚類と違い、空気中の酸素も取り入れ、呼吸を補助する器官が発達しているので飼いやすいとされます(撮影協力:アクアリューム紅鱗) 画像を見る

 

タイワンキンギョって魚を知ってますか? トウギョ、トーイユと呼ばれてる魚です。県内の中高年の男性(40代以上?)が好んで飼ってることが多くて、水槽や風呂桶でラフに飼われてる感じにも共通点がある気がします。これは沖縄ならではの趣味やたしなみなのでしょうか。
(北中城村ラージ・マーメイド)

 

確かに! トウギョ(和名:タイワンキンギョ、今回は方言名で表記)を飼ってる方って結構いる気がします。「親戚のおじさんが飼ってて、おうちに行くと見せてくれる」ってイメージが調査員にはあります。依頼者さんの言う通り、トウギョを買うことは一つの趣味として認識されているかもしれませんね。さっそく調べてみましょう。

 

琉球王国時代に移入

 

調査員は名護市内でトウギョを飼育、繁殖している座間味眞さんを訪ねてみました。繁殖させたタイワンキンギョを近隣の学校や飼育希望の人に提供している座間味さん。自宅の庭には、飼育用の水槽がいくつも置かれています。飼育を始めたきっかけはなんだったのでしょうか。

 

「僕はトウギョを飼い始めて10年くらい。知り合いの会社の事務所で飼われていたのをいいなぁ、と思い卵を分けてもらっておうちに持ち帰ったのがきっかけかなぁ」と話し始めた座間味さん。タイワンキンギョは丈夫で、飼育や繁殖も比較的簡単な魚です。手軽に飼育できることが多くの人に飼われているポイントの一つだろう、と座間味さんは考えています。

 

『とっておきの話 沖縄の川魚』(幸地良仁著、沖縄出版)という書籍によると、トウギョはもともと中国や台湾、インドシナ半島に分布する魚です。正確な年代は不明ですが、琉球王国時代に観賞目的で輸入され、当初は士族を中心に親しまれていたと考えられています。これが、時代が下るとともに県内の河川に定着。1960年ごろまでは、各地でその姿を見ることができたようです。しかし現在は、河川の環境の変化や、後の時代に移入されたティラピア、グッピーなどとの競争により、その姿を見つけることのできる場所は少なくなっているそうです。

 

座間味さんも幼い頃は、龍潭池など那覇市内でもトウギョを見かけることができたと話します。

 

ノスタルジーと希少価値

 

「現在、トウギョを飼育している人の多くは、子どもの頃に川や田んぼでトウギョを獲ったり観察してた人ではないでしょうか。中高年、特に男性に人気があるのはノスタルジーなのかも」と、座間味さんは、トウギョを愛好する人たちについて分析します。なるほど、トウギョを見ていると少年時代を思い出す方もいるのかもしれませんね。加えて、現在では少なくなってしまったトウギョを飼っているという自慢も少しはあるのだろう、と座間味さんは考えているようです。

 

最近では、海外から、人工飼育下で色などを改良したトウギョも輸入されており、ホームセンターなどでも簡単に手に入れることができます。しかし、座間味さんは幼い頃から親しんだ、沖縄のトウギョに強く引かれるようです。

 

「なんとなくだけどウチナームン(沖縄のもの)だから価値があるように思えます。人に分けてあげるときも『ヤンバルで獲って増やしたものだから』と言うとありがたがられる(笑)」

 

琉球王国時代から、観賞魚として親しまれてきたトウギョ。シニア世代の思い出としてだけでなく、若い世代にも身近な生き物であり続けてほしいですね。

 

(2019年5月30日 週刊レキオ掲載)

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