沖縄戦当時、食糧確保や疎開に尽力したとされる島田叡沖縄県知事と荒井退造県警察部長の姿を描く映画「島守の塔」(五十嵐匠監督)が製作されることが決まった。戦火の中、人命保護に奔走した島田知事や荒井警察部長、激しい地上戦に巻き込まれた県民の苦悩を浮き彫りにしながら、命の尊さを発信する映画とする。戦後75年に当たる来年秋、全国で上映される。
島田氏の出身地・兵庫県の神戸新聞社、荒井氏の出身地・栃木県の下野新聞社、沖縄の琉球新報社、沖縄タイムス社などで製作委員会を組織した。元沖縄県副知事で島田叡氏事跡顕彰期成会会長の嘉数昇明氏が委員長を務める。戦後75年記念映画として製作。来年4月から兵庫、栃木、沖縄の3県で撮影に入る。
島田氏は米軍上陸直前の1945年1月、沖縄県知事となり、沖縄戦の混乱の中、県庁が解散するまで県民保護や食糧確保に尽くした。荒井氏は43年、県警察部長に就任し、島田氏と行動を共にした。45年6月、2人は糸満市摩文仁で消息を絶った。51年、島田氏ら沖縄戦で殉職した県庁職員らの慰霊碑「島守の塔」が建立された。
映画は島田氏、荒井氏、部下で県出身の女性の苦悩や葛藤を描きながら命の尊さを訴える。44年の対馬丸沈没、10・10空襲、一般住民の犠牲を強いた沖縄戦の史実を作中に盛り込む。キャストは調整中。
五十嵐監督は「軍の圧力に屈しながらも苦悩し県民の命を守り抜こうとした兵庫県出身で戦中最後の沖縄県知事・島田叡と、栃木県出身で知事に付き従い職務を全うしようとした警察部長・荒井退造、そして沖縄戦で戦火に翻弄(ほんろう)されながらも必死に生きる沖縄県民、それぞれの生きる姿を描く映画とします」としている。
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