【嘉手納】地震の際に大規模火災が発生する恐れがあり、避難も困難として国が県内で唯一「著しく危険な密集市街地」に指定する嘉手納町嘉手納と屋良にまたがる通称「2番地地区」で、町が本年度から本格的な整備事業に乗り出す。沖縄戦で米軍に土地を奪われ、行き場を失った人たちが戦後、身を寄せ合うように住み着いた一帯は権利関係が複雑で、長年、再開発が滞っていた。町の担当者は「大きな前進だが複雑な心境の人もいる」とし、関係者の理解を得ながら丁寧に事業を進める考えだ。
年度内に整備着手
2番地地区は北街区と南街区に分かれ、2ヘクタールに100世帯以上が生活する。特に状況が深刻なのが南街区だ。県道74号から一歩中に入ると、木造やコンクリート造りの古い住宅が並び、その間を縫うように細い路地が走る。入り組んだ迷路のような一帯は、万一の事態が発生した場合に緊急車両が入れない。建物の増改築や解体、修復作業も困難なことから、環境改善が急務となっていた。
戦後に多くの人が集まって構成した同地区は、1軒の家で土地所有者、家屋所有者、居住者がそれぞれ違うケースもあるなど、利権関係が複雑となっている。これまで抜本的な解決策が取られないまま年月を重ねた。2018年10月に同地区まちづくり協議会(真喜屋清会長)が整備計画案を初めて了承したのを受け、ようやく事業が動き出した格好だ。
町は改善策として、南街区に緊急車両が通行できる幅員6メートルの防災道路を整備する方針。24年度以降の供用開始を目指すが、現在も整備地の選定に向け利害関係者との交渉が続いている。道路整備に先駆け今年10月から、整備予定地に住む人が入居できる都市再生住宅(6階建て・18戸数)の建設にも着手する。住宅は21年夏に完成予定で、同年末ごろから入居者を受け入れる。建物移転補償の調整も急ぐ。
密集市街地地区整備事業の総事業費は約17億円を見込み、防衛省や国土交通省などの補助金を活用する。
(当銘千絵)