キャンバスに向かい、ゆっくりと筆を進める仲宗根正満さん(詩画集「長い道」より) 画像を見る

 

ハンディキャップがありながら創作活動に打ち込み、2017年に61歳で亡くなった画家、仲宗根正満さんの作品を首里城再建に役立ててもらおうと、遺族が再建募金に寄付した人に作品を贈ることを決めた。作品を保管している姉の與崎輝子さん(75)=恩納村=は「本当は手放したくない。でも沖縄のために役立ててほしいと思っているはずだ」と目を潤ませた。

 

仲宗根さんは生後9カ月の時に、はしかによる高熱で脳性まひを発症した。重い障がいが残り、自由に動かせるのは右手首から先だけになった。鏡が丘養護学校(当時)で指導を受け、絵と詩の創作を始めた。

 

自身を「かたつむり」と表現した仲宗根さんは右腕をキャンバスに乗せ、天井に付けた鏡で全体像を確認しながら少しずつ筆を進めた。作品ではアコウやユウナなど沖縄の自然や躍動感のあるワシ、馬の絵を描き、見る人を驚かせた。

 

パソコンが普及すると、仲宗根さんはすぐに独学で使いこなし、コンピューターグラフィックスで心の中のマンダラを表現した。活動が認められ01年には社会・文化芸術活動が顕著な障がい者らに贈られる沖縄コロニー大賞を受賞。沖展に入選するなど、作品は高く評価された。

 

個展を開けば、来場者から「作品を買いたい」と求められるようになった。だが、母の貞子さんは息子が丹精込めて創作した作品を売ろうとはしなかった。そのため、多くの作品が與崎さん宅に運び込まれた。

 

仲宗根さんが亡くなってまもなく3年。與崎さんは自身の年齢も考え「このまま絵を置いておけない」と心配するようになった。友人の和宇慶ミツ子さん(82)=沖縄市=らに相談し、展示会開催を提案された。だが、新型コロナウイルスの影響で展示会は開催できず、代わりにデジタル絵画展を始めた。

 

同時に、和宇慶さんの紹介で沖縄でいごユネスコ協会(末吉重人会長)とつながり、日本ユネスコ協会連盟による首里城再建募金に寄付した人に作品を提供する企画が進んだ。與崎さんは元沖縄市長の父・正和さん(83)とも相談した上で「いろいろな人たちに絵を見てもらい、その人たちの力になればいい」と提供を決めた。

 

寄付の締め切りは今月31日。寄付は1万円~20万円で受け付け、金額に応じて作品を贈る。デジタル展は約120点が展示されており、そのうち108点は寄付者に贈られる。デジタル展は今月31日以降も見ることができる。
(仲村良太)

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