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スキンヘッドをニット帽で包み、寒そうに駅に向かって歩いていたのは栄和人氏(57)だった。愛知県にある至学館大学(旧・中京女子大学)のレスリング部監督であり、日本レスリング協会強化本部長も務める栄氏。だが、前々日の2月28日から続く報道のために疲れ切っているように見えた。それでも本誌記者が問いかけると、少し笑顔を見せた。

 

「この騒動には参ったよ。もうヘトヘトだよ。やっぱり私を陥れたいグループがいるんだろうね。そっちのほうが問題だと思うけどね」

 

金メダリスト6人を育てた“名将”を追い込んでいるのは、2月28日に週刊文春の報道により明らかになった告発状の存在だ。

 

「内閣府に告発状を提出したのは、貞友義典弁護士です。貞友弁護士は、元五輪出場選手らの依頼を受け、栄氏ら日本レスリング協会幹部たちの“パワハラ”を告発する文書を作成したのです。文書には栄氏らが伊調馨選手(33)の練習場所を不当に奪ったこと、伊調選手が師事しているコーチへ『伊調の指導をするな』といった圧力をかけていたことなどが記載されています」(社会部記者)

 

そもそも栄氏にとって、伊調選手も少女時代から育てた“弟子”だったはず。だが’09年に伊調選手が栄氏のもとを離れ、田南部力コーチ(42)の指導を仰ぐようになってから、その関係は悪化の一途をたどったという。スポーツ紙記者は言う。

 

「栄氏は独自の指導哲学を持っています。選手たちのために4千万円のローンを組んで一軒家を購入して寮にしたというエピソードはよく知られていますが、行きすぎた愛情になってしまうこともあるようです」

 

《(選手を)好きにならないと本気で指導できない》と、栄氏はスポーツ紙のインタビューや対談では指導哲学について語っているのだ。栄氏は’93年には臨時コーチとして指導していた10歳年下の女子レスリング選手と結婚。さらに’08年には、またも19歳年下の教え子と再婚している。

 

「結婚にはいたらなかったものの、栄氏にとっての“最愛の教え子”といえば、吉田沙保里選手(35)でしょうね」(前出・スポーツ紙記者)

 

再婚から2年後の’10年、栄氏と夫人は至学館大学にも近い新築マンションを購入している。そして、その隣の部屋を購入したのが吉田沙保里選手だった。’16年に栄夫妻はさらに大きいマンションに転居したのだが、同時に隣室を購入したのは吉田選手。8年も隣室に住み続けるという、その師弟の絆には驚くばかりだ。レスリング協会関係者は嘆息する。

 

「栄氏は昔から嫉妬深いところがありました。教え子が誰かほかのコーチに教えてもらおうとすると激怒するのです。彼は伊調選手が男子選手と練習していることを注意したそうですが、嫉妬にほかなりません。彼のもとを離れた伊調が偉業を成し遂げたのも許せなかったのでしょうね」

 

本誌が栄氏を目撃した3月2日、吉田選手や伊調選手との関係ついても質問した。

 

――吉田選手と、ずっと隣同士で生活しているのはなぜでしょうか?

 

「昔から吉田は、うちの女房が作った料理を食べているんです。まぁ、家族ぐるみの付き合いということです」

 

――伊調選手とは“家族ぐるみ”になれなかったということですか?

 

「ああ、彼女は大学を卒業した後は、僕のところから出て行って、別の練習場所を求めたから……。僕や吉田とは進む道が違ったのだろうね」

 

日本レスリング協会からの事情聴取に備えるため、改札口を通るその背中はとても小さく見えた。

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