■傍らにいることが妻である自分の役目
大谷が水原氏と親しくなったのは日本ハム在籍時代の’14年だった。当時を知る元日本ハムの打撃コーチ、柏原純一さんは言う。
「一平は当時在籍していたメンドーサ選手の通訳をしていて、2人の仲がとてもよかったんです。その輪に翔平が入ったようですね。翔平が渡米を意識し始めてから、一平との距離が近づいた感じがしました。英語やメジャーの流儀など、わからないことが多かったからでしょう。だから僕は、一平の最大の功績は、翔平の“不安感”を取り除いてあげたことだと思っています」
スポーツジャーナリストの小林信也さんも言う。
「大谷選手のいままでの発言からは奥さんに“これを期待する”といった部分がないです。水原氏のほうが、女房役でもありましたね。むしろ奥さんがこれから、“水原ロス”の空白を埋めなければならない感じがします」
冒頭の仁川国際空港では、硬い表情の大谷に対し、真美子夫人の笑顔が際立っていた。前出の在米ジャーナリストは言う。
「水原氏の件は本当にショックで、感情豊かな真美子夫人は思わず涙を流してしまったようです。ただ、すぐに“誰よりも悲しいのは翔平さんだ”と思い直し、彼のつらさや今後の不安をどうやったら取り除けるか考えたそうです。の結果、今季は全試合、大谷選手に同行して観戦し、彼の傍らにいることが妻である自分の役目だと心に決めたといいます」
『メジャーリーグ・完全データ選手名鑑』の著者で、スポーツライターの友成那智さんは言う。
「水原氏の不在で当面、大谷選手は日常生活の不便さを感じるはずです。特に遠征先では、ほとんど水原氏が買い出しなどの手配をされていたようですから……。メジャーリーガーは専用機で移動しますから、家族を連れて動く選手は多数います。特に夏休み中は、約3カ月間あるので子供連れが多いです。1カ月ぐらいは同行するケースも少なくないです。スター選手は、大谷選手も含めて遠征先は全部スイートルームに泊まる契約になっています」
真美子夫人は“覚悟”を決めているというが、さすがに全試合、現地観戦する夫人は珍しいようだ。
「奥さんと新しい通訳の方がタッグを組んで、大谷選手を支えることになるでしょう。もちろん愛犬・デコピンも現地に連れていくはずです」(前出・友成さん)
水原氏との突然の別れは、大谷夫妻にとって大きな転機になると前出の小林さんも言う。
「通訳や運転手業はともかく、実は水原氏が球場内で大谷選手とキャッチボールまでやっていたことに現地では“やりすぎ”だと批判の声もありました。“プロに小学生レベルが相手なんて……”と一部で指摘されていたのです。
ですから今後は、球団のピッチングコーチが堂々と彼の前に現れることもできます。逆に大谷選手の偏った面が改善される機会かもしれません。奥さんの必要性を改めて感じることも増えるでしょう。好きな人の声援を毎日感じられること。それは傷心の大谷選手にとっても自分の再発見につながると思います」
大谷選手なら立ち直れるはずだ。愛する真美子夫人がずっとそばにいてくれるから――。