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寒ければ寒いほど、美しくなる場所がある。“寒いから行かない”ではなく、“寒いからこそ行きたい”目的地があるのだ。

 

「氷結した滝、氷瀑を見たことはありますか。冬の奥入瀬渓流は大迫力の氷瀑をはじめ、雪化粧した渓流はどこも息をのむ美しさです」

 

そう教えてくれたのは、年の多くを旅先で過ごす旅ジャーナリスト・のかたあきこさん。東北屈指の景勝地である青森・奥入瀬渓流は、国立公園に指定されている。その園内唯一の宿「星野リゾート 奥入瀬渓流ホテル」が、今冬から9年ぶりに冬の営業を再開したという。

 

旅の達人をして“息をのむほど美しい”と言わしめる冬景色……これを見ない手はナシ!

 

記者はのかたさんとともに一路、青森へと向かった。

 

東京駅から新幹線に乗り、昼前にJR「八戸」駅に到着。八戸駅から宿の送迎バスに揺られ、1時間強。今回の滞在先「星野リゾート 奥入瀬渓流ホテル」に荷物を預けたあとは、ホテル至近の「奥入瀬ランプ工房」へ。予約すればひょうたんランプの製作体験もできる。

 

ホテルでの夕食は、青森ならではのりんごをメニューやインテリアに生かしたブッフェレストラン「青森りんごキッチン」を選ぶ。海鮮、せんべい汁や十和田バラ焼きなどの高度料理、多彩なデザート。おなかも心も大満足だ。

 

そして夜は渓流露天風呂にしつらえられた「氷瀑の湯」へ。キンと冷えた空気を感じながらも、肌あたりの優しい単純温泉のおかげか、体は芯から温かい。ライトアップされた人工の氷瀑が、とても幻想的だった。

 

静かすぎるほどの朝、早く目覚めると、まずは露天風呂へ。朝の氷瀑の湯からは真っ白な雪のあいだを流れる奥入瀬渓流が輝いて見えた。

 

このあとは、旅のハイライトである渓流ガイドツアーが待っている。朝食ブュッフェでは、その場で搾ってくれるりんごのフレッシュジュースが最高! 青森独特の文化の“朝ラーメン”に、焼きたてのりんごのパンケーキもおいしく、たっぷりすぎる腹ごしらえをしてしまった。

 

ホテルのある場所から十和田湖まで約14キロを走り、14本の滝を擁する奥入瀬渓流は、12月ごろから雪に覆われる。この渓流の見どころをネイチャーガイドとともに巡る『冬の奥入瀬渓流ガイドツアー』(ホテル主催・無料・要予約)が今回のメインイベントだ。

 

防寒仕様でマイクロバスに乗り込む。ツアーによってはスノーブーツも貸し出してくれるので安心だ。苔の聖地であるこの地にほれ込んだというイケメンガイド・丹羽裕之さんとともに、いざ出発!

 

すぐ目に飛び込んできたのは、渓流内の岩に降り積もった雪の綿帽子。巨大な大福のような、ぽってりとした姿が愛らしく、新雪の世界に心が躍る。さらに10分ほど進むと、突然、見事な氷瀑が現れた。「馬門岩」だ。間近で見るため車から降りる。巨大なつららが幾重にも伸びており、そのあまりの透明度に、ときに青い光を放っているようにも見えた。

 

再度車に乗り、次は落差20メートルある「雲井の滝」で下車。手が届く範囲の小さな流れには短いつららがいくつも連なり、その間を清冽な水が落ちていく。沢の飛沫が苔について凍った「苔氷」は、時間を止めて閉じ込めたかのように、結晶となって貼り付いている。

 

「いちばん美しいのは晴れた朝、まさにこの時間です。氷の形、渓流の表情は毎日違い、同じ景色には二度と出合えません。氷瀑がもっとも大きく育つのは2月ごろ。寒ければ寒いほど大きく美しくなるので『寒さ万歳!』なんですよ」

 

目を輝かせて語る丹羽さんに導かれ、さらに数カ所の滝やつららスポットを巡り、50分のツアーは終了。のかたさんも大興奮だ。

 

「雪と親しみ、童心にかえり、ワクワクと視・聴・嗅・味・触の五感が刺激されるひと時でした。寒さを感じるヒマもなかった!」

 

今回参加したのはホテル主催のツアーだが、奥入瀬自然観光資源研究会のツアーに申し込めば誰でも自然の一大芸術を堪能できる。

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