「いくよさんにお会いしたのは5月上旬。最後となった11日の舞台の数日前に楽屋を訪ねたときでした。彼女は日頃から『体が動く限り漫才をやりたい』と仰っていた“仕事が大好き”な方。この日も元気そうだったので、亡くなられたと聞いても信じられません……」

 突然の訃報に、顔を曇らせる本多正織さん。彼は、女性漫才コンビ・今いくよくるよの漫才の台本を手掛ける作家で、彼女たちとは、30年来の交流を続けていた。

 5月28日、今いくよさん(享年67)が、胃がんのため亡くなった。彼女に、胃がんが見つかったのは、昨年9月。いくよさんは、お酒とタバコが大好きで、ビールは毎日飲んで、タバコも1日30本は喫っていたという。胃がんに詳しい秋津医院の秋津壽男院長は、彼女の普段の生活習慣が体を蝕んだと指摘する。

「彼女はヘビースモーカーだったそうですが、胃がんの原因として可能性が高いのは、やっぱりタバコでしょうね。吸い殻入れに水を注ぐと茶色くなりますが、タバコを喫った口内の唾も同じようなもの。その唾を何年も胃に入れ続ければ、胃はどんどん悪くなります」

 体にメスを入れずに抗がん剤での闘病を選んだ理由についても、こう解説する。

「胃がんは手術して取るのが大原則です。手術しなかったということは、見つかった時点で転移があった可能性があります。“切らなかった”ではなく、“切れなかった”。すでに、末期だったのではないでしょうか」

 胃がん発見から3カ月。昨年12月に、いくよさんは舞台に復帰した。

「でも、それは体に負担がかかる抗がん剤治療を一旦休止する、一時退院にすぎなかったのでしょう。普通、退院後は人生でやり残したことをしてもらうための時間にあててもらうのです」(前出・秋津院長)

そんななかでいくよさんが最後に選んだのが「くるよちゃんと最後まで舞台に!」という願い。彼女は悲壮な覚悟で、舞台に上がっていたのだ。相方と舞台へのあふれる愛が、満身創痍のいくよさんを舞台に上がらせていた――。

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