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「役をいただけるようになってから大事なのは日々の評価。日々の評価がよかったから、次から次へと役をいただけるわけです。どんな役をやってもダメだったら次はこない。どこかがダメだったら、評価を落として、役もやってこないんです」

 

そう語るのは、隔週連載『中山秀征の語り合いたい人』第70回のゲスト・俳優の市村正親さん(67)。19日からのミュージカル『ミス・サイゴン』(東京・帝国劇場にて11月23日まで)に出演する市村さんに、シルクハットとステッキの「かっこいい持ち方」をリクエスト。角度まで細かく指導してもらい、中山もミュージカルスター風に!?ふだんから親交のある2人にじっくり語っていただきました。

 

中山「劇団四季でデビューされてから、もう44年目。きっかけはなんだったのでしょう」

 

市村「21歳から3年ほど『水戸黄門』の西村晃さんの付き人をやっていて。“石の上にも3年”じゃないけど、自分の中で付き人論ができてくるんです。どうしたって師匠が第一、付き人の自分は第二の存在。24歳のときに『そろそろ24歳にもなったので、自分を第一に考えたくなりました』と伝えたら快諾してもらえて卒業して。そのタイミングでバレエの先生から劇団四季のオーディションに誘われたんです」

 

中山「四季に入りたかったわけではなかった」

 

市村「そうだね(笑)。それで、イエス・キリストの最後の7日間を描いた『イエス・キリスト・スーパースター(注:現在は『ジーザス・クライスト・スーパースター』)という作品のオーディションを受けて、役柄の第一志望は『群衆』、第二志望は『使徒』。どちらも大勢の中の1人という役』

 

中山「大きな役を選ばなかったんですか?」

 

市村「ユダやイエスなんて、1つしか枠がないんだから受かるわけがない。落ちてしまったら、レコードや資料を買ったお金が戻ってこないでしょ。僕は西村さんの付き人時代に、ちょい役でも作品に出ていれば出演料をもらえることがわかっていたから、第一志望は群衆なんですよ。でも、最終的に『ヘロデ』という役をもらったの」

 

中山「ちゃんとした役についたんですね」

 

市村「一時期は、『市村にイエス(主役)をやらせようか』という話も出たんだって。でも僕は劇団四季に所属していない外部の人間だから、話は進まなかったみたい。イエス役は研究所に入っていた鹿賀丈史さんがやったんだけど、僕はそこでイエスをやらなくてよかったと思っているんです」

 

中山「どうしてですか?」

 

市村「難しい役だから。まず僕には出ないキー。当時イエスをやっていたら、いまの僕はないですね。ヒデちゃんとの対談もたぶんなかった(笑)。僕の場合、若いうちから大きな役をやっていたら、ダメになっていたと思うんだよね」

 

中山「役をもらえただけでもラッキー、と」

 

市村「そこから、いろいろ声をかけてもらえるようになって、『ウエストサイド物語』のベルナルド役の話が来たときに、『立て続けに君の名前を挙げると劇団の内部から批判が出るから、劇団員にならないか?』と言われて。だから、僕から『劇団に入りたい』って言ったわけじゃないの(笑)」

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