「一年のうちで紫外線がもっとも強くなるのは、8月ではなく今の時期。美白ブームも後押しして、入念なUV対策をされている方も少なくないでしょう。ところが、これが健康を損なうことにつながっていることをご存じでしょうか?実は、最近、日光の避けすぎによるビタミンD不足の患者が、世界的に増えています」

 

そう語るのは順天堂大学教授の小林弘幸先生。そもそも「ビタミン」が「体内で作れない栄養素」を指すのに対し、ビタミンDだけはそれが可能という変わった存在。むしろ食べ物だけで補うことは難しく、紫外線を浴びることで、皮膚が作られているのだ。そして、極端なUVカットが、ビタミンDの合成を阻止する一因に。

 

「では、ビタミンDが不足するとどうなるのでしょう?血液中のカルシウムが不足して、『低カルシウム血症』を引き起こしてしまいます。すると、今度はその不足を補おうと、骨が溶けてしまうのです!その結果、なんと骨がスカスカに……」

 

その昔、栄養状態が悪い時代に「くる病」という骨が変形する病気が子供に多発したが、ビタミンD不足によって、近年、このくる病が増加しているという。

 

「また、カルシウムは筋肉にも存在。カルシウムが不足すると、血管の筋肉も痛めやすくなるので、高血圧や動脈硬化を発症する引き金にもなりえるのです。皮膚がんのリスクになることから、先進国では紫外線を避ける傾向にありますが、たとえば家から駅までの十数分程度、顔や手に日光が当たる分には心配ご無用。むしろ、その程度の日光浴で、ビタミンDは十分合成されるのです」

 

色の白いはなんとやらだが、過剰なUVカットは血流にも骨にも、あまりよいとは言えなさそうだ。

 

「ただし、裸同然の格好で長時間直射日光にさらされることは、皮膚がんはもとより、シミやヤケドのような日焼けの原因になるので、決してオススメいたしません」

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