image

「皆さんが“健康にいい”と信じて続けている習慣の中には、逆に健康を損ねるものもあります。それが原因で、頑固な肩こりや腰痛などの体の不調を招いている人が多いのも事実です」

 

そう話すのは、理学療法士の舟波真一さん。独自に開発した「バイニーアプローチ」と呼ばれる施術で、長年の腰痛やひざ痛などに苦しむ多くの患者の症状を改善させてきた。共同でバイニーアプローチを開発した理学療法士の山岸茂則さんと出版した著書『痛みはうつぶせで治しなさい』(小学館)では、体の痛みのメカニズムや、痛みを取り健康寿命を延ばす健康法を紹介し、今注目を集めている。

 

「人間の体は、筋肉も骨も内臓もすべて『膜組織』で包まれています。最新の研究で、痛みの原因は筋肉そのものや骨ではなく、この膜組織にあることがわかってきました。最近よく知られるようになった『筋膜』も膜組織の1つです。膜組織の上には痛みを刺激として受け取るセンサーが無数にあります。膜組織が硬くなったりゆがんだりすると、その刺激がセンサーから脳に送られ痛みとして認識されます。痛みを改善するには、膜組織と密接なつながりのある『腹圧』を高く保てばいい。今、知られている健康法の中には、逆にこの腹圧を落とし、痛みやコリを悪化させてしまうものがあるんです」

 

そこで今回、「本当は間違っている7つの健康常識」を舟波さんに解説してもらった。

 

【1】5本指ソックスをはく

 

冷え性改善や血行促進などの健康効果があり、足指それぞれに力を入れて踏ん張れるため、転倒防止にもなると思われている5本指ソックス。しかし、舟波さんは「すぐにやめるべき」と指摘する。

 

「足指の間隔が開くと本来の足の裏のアーチが低くなり、土踏まずのない扁平足に近くなります。土踏まずは、足が地面に着地したときの衝撃を吸収してくれる場所。そのクッション機能がなくなると衝撃を直接受けるだけでなく、足裏の感覚が弱くなり、むしろ転倒しやすくなります。足指を開く健康グッズも同じ理由でNGです」

 

【2】土踏まずのツボ押し

 

1で説明したとおり、土踏まずは土を踏んではいけない場所。つまり、本当は刺激してはいけない場所なので、ツボ押しはもってのほか。

 

「土踏まずを刺激すると腹圧が下がります。腹圧とは、文字どおりおなかの中の圧力のことです。腹圧が下がるとおなかの風船がしぼみ、臓器が圧迫されて内臓の働きが低下。血流も悪くなり、体調不良の原因となります。また、体の中心が不安定になるので、体の外側の筋肉であるアウターマッスルを使って体を支えようとします。すると、アウターマッスルの使いすぎで筋肉を包む膜組織が硬くなり、肩こりなど体の痛みにつながるのです」

 

【3】靴に軟らかいインソールを入れる

 

歩くときの衝撃をやわらげるために入れる軟らかいインソールは、足が本来持つクッション機能を甘やかし、足裏の感覚を弱くする恐れがある。

 

「土踏まずを支えるアーチパッドや、土踏まず部分が盛り上がっている健康サンダルは土踏まずを刺激し続けるので、やはり腹圧が下がります。靴の中には軟らかいインソールは入れないでください」

 

【4】マッサージは痛いほど効果がある

 

イタ気持ちいいマッサージで気分がスッキリするという人は多いはず。しかし、ほぐそうと強く揉むほど膜組織が硬くなり、痛みの原因となる。

 

「人間の体の6〜7割は水分で、膜組織も非常に多くの水分を含んでいます。しかし、マッサージでコリをぐいぐい揉みほぐそうとすると、膜組織から水分が押し出され、水気が抜けて硬くなります。膜組織が柔らかければ、体を動かしたときに筋肉も連動し、滑らかに動きます。しかし、膜組織が硬いと筋肉が膜組織に引っ張られ、繊維が無理やり引き伸ばされ、痛みが出てしまうのです」

 

【5】ハードな筋トレをする

 

「スポーツジムでおなじみのマシントレーニングの多くは、体の外側の筋肉・アウターマッスルを鍛えるもの。アウターマッスルを使いすぎると、その反動で体の内側にある筋肉・インナーマッスルの働きが抑えられます。するとインナーマッスルに囲まれているおなかの中の空間がしぼみ、腹圧が下がってしまうんです」

 

その結果、膜組織が硬くなり、さまざまな体の痛みを招いてしまうのだ。

 

【6】ストレッチを毎日頑張る

 

4の「マッサージは痛いほど効果がある」と同じ理由で、体をほぐそうとストレッチを頑張りすぎると膜組織が硬くなって腹圧が下がり、かえって体に痛みが出る。

 

「ストレッチで筋肉を伸ばした瞬間は、確かにほぐされて気持ちがいいのですが、伸ばされた筋肉はその反動で縮むようになっています。強く押すほど、次の瞬間には硬く収縮するので、結局元に戻るだけなんです」

 

【7】歩くときは姿勢を正し左右同じ動きを意識

 

「そもそも、人間の体は左右対称ではありません。歩くとき、左足は最初の一歩を出すことで軸になります。それを軸として体を前に運び、右足を振り出します。ですから、左右同じ動きを意識するより、自然な体の動きに任せるのが正解。自分のペースでリズムよく歩くことに集中すると、幸せホルモンと呼ばれるセロトニンも分泌され、脳によい刺激が届きます。背筋を伸ばして姿勢を固定しようとするといつもと違う不自然な動きになるので、意識しすぎないようにしましょう」

関連カテゴリー: