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柔道女子78kg級の期待の新星・梅木真美選手(21・環太平洋大学4年)が生まれ育ったのは、大分県九重町。父・彰博さん(59)は和牛の繁殖農家の3代目。母牛に種付けをし、生まれた子牛を300キロまで育てて肥育農家に出荷するまでが仕事だ。

 

「農家の嫁は、朝から晩まで農作業。だから、子供たちは、もうほったらかし。野放し状態です」と、ケタケタ笑う母・英子さん(58)。それでも農家の野菜はとれたて新鮮。お米も自家製で、肥育農家からもらったA5ランクの和牛や、熊本の最上級の馬肉を食べて、真美さんはスクスクと育ち、現在174センチ78キロ。スタミナと根性を武器に、粘り強い柔道をする。

 

昨年8月、カザフスタンで行われた「アスタナ世界柔道選手権」に初出場して初優勝。出身地の九重町から町民栄誉賞を贈られた。真美さんは3姉妹の末っ子。幼いころから率先して牛飼いのお手伝いをしていたという。両親と3姉妹で、放牧場の山まで牛を連れていったときのこと。1頭の母牛が群れから外れそうになった。

 

「すると真美がパッと両手を広げて、体を張って牛を制したんです。角はないけど、親牛だから400キロくらい。それでも真美はまったく怖がらなかった。真美が3歳くらいだったと思います」(英子さん・以下同)

 

3歳にしてこの度胸があれば、世界の強豪にも臆さないはずだ。小学校は自宅から4キロも離れていたが、3姉妹は通学バスを使わずに歩いて通った。牛の世話と通学で、自然に足腰が鍛えられた真美さんが、柔道を始めたのは小3のとき。地元の柔道クラブの師範に声をかけられた。

 

「遊びのように楽しそうに通っていました。ただ、勝っても負けてもニコニコしているので歯がゆかったですけどね」

 

いつもニコニコしている真美さんだが、実は心の底に燃える闘志を秘めていた。中2の団体戦(3人制)で、彼女の前の2人が負け、全国大会に行けなかった。すると、泣いて悔しがったのだ。

 

「ビンタをされても、どんなに絞られても、泣いたことがなかったから、監督も私もビックリでした」

 

高校は強豪の熊本県・阿蘇中央高校に進学し、親元を離れた。大学はバルセロナ五輪金メダリストの古賀稔彦監督が指導する岡山の環太平洋大学へ。その選択に英子さんのアドバイスがあった。

 

「いろいろな大学に見学に行ったなかで、最も厳しい稽古をしていたのが、環太平洋大学。真美は行く気になれなかったようですが、『(見学者に)きついところしか見せなかった環太平洋大学は、それだけ正直だということ』と、真美にはそう伝えましたね」

 

今年6月、大学対抗の団体戦には真美さんは膝の故障で出場していない。結果は決勝で負けて2位。

 

「その後、真美からメールがあって、『悔しいけど、私が出場しないのに優勝したら、もっと悔しかったかも』とあって。こんなこと言う子だったかなと。自分がチームを引っ張っているという自負が出てきたんでしょう。少し成長したのかなと思います」

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