アンチエイジングの第一人者・白澤卓二先生が、新たな”長寿の鍵”に着目している。その名も「テロメア」。「命のロウソク」とも呼ばれ、寿命に大きく関わるという。でも、これっていったい何のこと?

「テロメアとは、細胞の中にある染色体の端っこのことです。人間は細胞分裂を繰り返し、新陳代謝をおこなっていますが、テロメアはそのたびに短くなっていきます。そして、ある程度まで短くなると細胞分裂は止まり、老化が始まってしまうのです。テロメアが短くなると、肌の弾力性のもとである、エラスチンというタンパク質の分泌がストップ。肌はみるみる衰え、シミやシワが現れます」

デンマークで70歳の一卵性双生児913組のテロメアを調査したところ、双子でもその長さに違いが現れ、短いほうは老け顔になることが判明。特に老けて見える25人中22人は、双子のもう一方よりも先に亡くなってしまい、「テロメアが短いと老けるのが早く、短命である」ということがわかったという。では、この命のロウソクを、長く保つ方法は何だろう。

「生まれた時点ではテロメアの長さが同じだったはずの一卵性双生児も、年齢とともに差が出た。つまり環境=生活スタイルが、テロメアの長さを変えていたのです。そこで僕は、日本で長寿県として知られる長野県に着目し、調査をおこなってきました。そこで出合ったのが高山村。この村のお年寄りのテロメアが総じて長い。ある64歳女性など、60代の平均値より倍近くもテロメアが長く、驚きました」

高山村は、長野駅から北東へ車でおよそ40分。8つの温泉がある人口7千人ほどの村だ。人口の25%がお年寄りで、果樹栽培や米、野菜づくりが主な産業。コンビニはない。この生活スタイルが、テロメアの長さと関係しているようだと白澤先生はいう。そこで、高山村に記者が急行。その暮らしを探った。

【毎朝の坂道ウオーキング】山あいにある高山村は、村中が坂道。どこに行くにも坂道を歩かなければならない。「適度な運動はテロメアを長く保てます。高山村では日常生活のなかで、坂道を歩くという適度な運動を、無理なくできているのでしょう」(白澤先生・以下同)。

11個のりんご】りんごの名産地である高山村では、特にこの時期、新鮮なりんごに事欠かない。「りんごには、プロシアニジンという成分が豊富に含まれています。最近、この成分を線虫という動物のえさに加えると、線虫の寿命が伸びることがわかりました」。プロシアニジンは、皮と実の境目に多い。皮ごと食べるのが寿命を伸ばす秘訣だ。

【塩分控えめの漬け物とストレスフリー】冬が厳しい高山村では、漬け物が常備菜。「漬け物などの発酵食品は免疫力をアップさせ、細胞の老化を防ぎます」。ただし、漬け物は塩分過多に要注意。そして何より「ストレスフリー」な生活が、テロメアを長くするという。「アメリカの研究では、虐待を受けた子供のテロメアは、そうでない子供に比べ短くなることが明らかになりました。ストレスこそ、テロメアの大敵です」。

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