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血管がミミズ状に膨れてしまう下肢静脈瘤。これが気になってスカートがはけないという人も多い。どう治療すればいいか、第一人者に聞いた。

 

「鏡に映った自分の後ろ姿を見たら、『膝の裏側や、ふくらはぎ辺りの血管がボコボコしていてビックリした』と言って来院される方が増えています。見た目の問題に加え、多くの方が、夕方になると“むくみ”や“だるさ”に悩んでいます。こうした症状をお持ちの方は“下肢静脈瘤”という病気かもしれません」

 

そう警鐘を鳴らすのは、お茶の水血管外科クリニック院長の広川雅之先生。下肢静脈瘤とは、足の静脈にある“弁”が壊れて、本来心臓に戻るはずの血液が逆流し、血管にたまることで、こぶのように膨らんでしまったり、血管がクモの巣状に皮膚にひろがって見えたりする病気のこと。

 

「下肢静脈瘤は、成人の2人に1人に見られるほど、多いものです。患者数は年齢とともに増加していって、50~69歳では約6割が、70歳以上で約7割が罹患しています。比較的重いタイプにかぎっても患者数は推定1,000万人。女性は男性の3倍なりやすいといわれています」(広川先生・以下同)

 

どんな人が下肢静脈瘤にかかりやすいのだろうか。

 

「血液を送る筋肉のポンプ作用が男性よりも弱いということも、女性のほうが罹患者の多い一因。出産や妊娠を機になりやすいので注意が必要ですね。また、皮下脂肪の量も関係してきます。皮膚には血管を抑える役割もあるのですが、軟らかい皮下脂肪が多いと、血管が膨れやすくなってしまうのです。BMI(肥満度をあらわす指数。体重〔kg〕÷身長〔m〕で求められる)が30を超える人はリスクが高くなるといわれています」

 

さらに、遺伝も関係する。

 

「ある研究では、両親ともに下肢静脈瘤がある人は、90%の確率で発生するという結果が出ました。職業も関係していて、スーパーのレジ係の人や、調理師や美容師など、長時間立ちっぱなしの人がなりやすい。主婦でも、介護や看護などを機になってしまう方も多いようです。家事は自分のペースでできるが、介護や看護は自分が休みたいときに休めないので、体に負担がかかりやすいためです」

 

運動不足で筋力が低下している人のほか、いきみすぎると血管に負担がかかるので便秘の人も注意が必要だという。それでは、実際になってしまった場合、どうすればいいのだろう。

 

「命に関わることはありませんが、進行すると足のむくみやだるさがひどくなったり、こむらがえりが起こることがあります。さらに重症化すると、静脈瘤の部分の皮膚が硬くなって茶色く色素沈着したり、湿疹ができたり、潰瘍になってしまう人もいます。そういう症状に悩んでいる人は、治療を受けてください」

 

それでは、どんな治療法があるのだろうか。

 

「下肢静脈瘤の治療は、日進月歩です。以前は血管を抜き取って静脈瘤をとる“ストリッピング手術”という大がかりな手術が主流でしたが、’14年からレーザーや高周波で血管を焼く“血管内治療”が保険適用になり、普及しました。レーザーや高周波で静脈を焼いている時間は、わずか5分ほど。前後の処置を含めても、治療そのものは1時間程度で終わります」

 

局所麻酔をするので、治療中と治療後の痛みも、ほとんどない。術後はすぐに歩けるので、その日のうちに自宅に帰れるという。

 

「数日間はクルマや自転車の運転を控える必要がありますが、ほとんどの日常生活は問題なく行えます。シャワーは翌日、入浴も5日目から可能です。立ち仕事や肉体労働は3日後から。2週間たてば、温泉旅行や運動もできます」

 

見た目の治癒も早い。

 

「太ももにつっぱり感があったり、多少のしこりや小さな傷痕が残ったりしますが、3カ月もたてばわからなくなります」

 

気になる治療費も、国民健康保険の3割負担の場合で、4万~5万円で受けられる。ただし、誰もが手術を受けられるとは限らない。

 

「過去に“エコノミークラス症候群(肺血栓塞栓症)”になったことがある人は、合併症のリスクがあるので手術を受けられません」

 

そのほか、がんのホルモン剤治療を受けている人、低用量ピルやステロイド剤を服用している人なども、合併症を起こしやすいので、医師との相談が必要だ。

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