処方箋をもって薬局で薬をもらうとき、薬局によって負担額が異なることが! その額は、積み重なればけっして見過ごせない額になっているようで――。
「みなさん、薬をもらうと、必ず『調剤明細書』を受け取ります。薬価はどこの薬局も同じですが、差が出るのは、『調剤技術料』と『薬学管理料』の項目。ここが立地や窓口でのやりとりなどによって異なり、調剤にかかる点数、すなわち支払額の差となっているのです」
医療保険に詳しいファイナンシャルプランナーの内藤眞弓さんはそう解説する。この調剤明細書をよく見ると、じつは気づかないうちに加算されている点数が多々あるという。そこで内藤さんが調剤明細書の「区分/項目名」でわかる、「薬の処方にかかっている意外なお金」を解説してくれた。
【区分:調剤技術料/項目名:調剤基本1】
大型病院の門前薬局より、町中の薬局のほうが50円以上高い。
「ふだん、クリニックも総合病院もひとまとめに病院と呼びますが、健康保険上では、ベッド数20床以上の病院とそれ未満の診療所に分かれます。『調剤基本料2』となっていれば、病院の前にある薬局(門前薬局)。『調剤基本料1』は町の薬局。クリニックの前にあっても町の薬局扱いです。『1』のほうが『2』より50円以上割増しに(以下、金額はすべて3割負担の患者が支払う実費)。厚労省は、患者が身近な薬局で気軽に相談できることを目指しています。門前薬局は常に病院の患者が来るため、報酬が抑えられているのです」(内藤さん・以下同)
【区分:調剤技術料/項目名:後発医薬品調剤体制加算】
取り扱う薬のうち、ジェネリック薬が75%以上を占める薬局は割合に応じて50円以上高い。
「『後発医薬品調剤体制加算』の項目がある薬局は、取り扱い薬のうち、ジェネリック薬を75%以上処方していることを指します。割合に応じて、ほかの薬局より50円以上高くなります」
【区分:調剤技術料/項目名:地域支援体制加算】
「明細に『地域支援体制加算』という記載がある薬局は、ほかより110円高くなります。これは夜間や休日にも薬剤師が調剤してくれる薬局などに適用されます」
土日に処方してもらえるのは助かるが、その薬局に平日昼間にしか行かないというのなら、毎回110円はもったいないかも。
【区分:調剤技術料/項目名:1包化加算】
1回に飲む薬を1包化してもらうと、1週間当たり100円が加算される(42日分以下。43日以上は一律660円)。
【区分:薬学管理料/項目名:薬剤服用歴管理指導料(手帳なし)】
毎回おくすり手帳を持たずに薬局に行き「大丈夫です。次は持参してください」と、薬剤師に言われた経験がある人も多いだろう。
「『大丈夫』というのは、持参しなくても処方はできますという意味。調剤明細書に『手帳なし』と書かれ、40円が請求されています」
【区分:薬学管理料/項目名:かかりつけ薬剤師指導料】
かかりつけ薬剤師を指名すると最大100円高くなる。
【区分:薬学管理料/項目名:重複投薬・相互作用等防止加算】
自分の手元に残っている薬を申告して、薬剤師が医師に照会して処方が変更になると90円高くなる。
親切に思えるサービスも、それぞれ負担額が上乗せされているのだ。
おくすり手帳を持たずに、ジェネリック薬を多く扱う「調剤基本料1」の薬局で、かかりつけ薬剤師を指名して、1カ月以上分の薬を1包化してもらい……などの加算が重なると、1回の支払いで1,000円近くの差が出ることも!
「けっして薬局が悪徳というわけではなく、薬剤師が専門性を発揮して医師の処方ミスを防いだり、患者の薬歴管理をして副作用等を防ぐため厚労省が定めたものです。その加算の一部が患者負担になっているために起きていることです。とはいえ、定期的に薬局で薬をもらう人には見過ごすことのできない金額であるのも事実。加算の仕組みを知って、自分に合った薬局を見つけることを心がけましょう」