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長年連れ添い、よくも悪くも「当たり前」のような存在になっている夫という存在。そんな夫がある日突然、先立ってしまったら……。だが、途方に暮れていては乗り切れない。夫の死後に訪れる“現実”とは――。

 

突然、夫が亡くなった場合、「死亡診断書(死体検案書)」の発行、「死亡届」と「火葬許可申請書」の提出。さらにこの間、葬儀の手配も同時進行で行わなければならなくなる。しかし、手続きや法要が終われば一段落かと言えばそういうわけにはいかない。その後も世帯主や光熱費の名義変更などさまざまな手続きが必要だ。

 

そこで「生活費」に直結する事柄について、50代後半で18歳以上の2人の子どもがいる会社員の夫と専業主婦の妻をモデルに、1級ファイナンシャル・プランニング技能士の大野高志さんが解説してくれた。

 

「夫が亡き後の妻の生活費は、遺族年金、預貯金、生命保険の3つが基本になります。この3つで足りない場合はパートなどの収入や生活保護を検討する必要があるでしょう」(大野さん・以下同)

 

この3つであなたの暮らしが成立するかをチェック。

 

■遺族年金には2種類ある

 

「遺族年金」には、(1)遺族基礎年金と、(2)遺族厚生年金の2種類がある。今回想定した夫婦は夫が会社員(厚生年金の被保険者)のため、夫が亡くなった場合は(2)の遺族厚生年金が妻に支給されるという。

 

「一般的に、夫が亡くなった時点で子どもがまだ18歳未満なら、(2)の遺族厚生年金のほかに(1)の遺族基礎年金も支給されますが、子どもが18歳以上の場合は対象外。ただし、夫が亡くなった際の妻の年齢に応じて、『中高齢寡婦加算(妻が40~64歳)』または『経過的寡婦加算(65歳以上)』が合わせて支給されます」

 

遺族厚生年金の支給額は、およそ年間100万~200万円。夫の厚生年金加入状況によって異なるが、夫に支給される厚生年金の4分の3と決まっている。詳しくは、日本年金機構のねんきんネットや最寄りの年金事務所で確認してみよう。

 

■受給は申請ベース

 

ただし、受給には注意点も!

 

「そもそも年金は『申請ベース』。申請しない限りもらえません。会社員の夫が年金未受給の場合は、勤務先から死亡の手続きをするので夫の年金手続きは不要です。いっぽう、妻の遺族年金は申請が必要。年金はあくまで『権利』。つまり、不要という選択肢もあるので、必要なら申請しないといけません」

 

すでに厚生年金を受給していた場合は。

 

「仮に生前、夫の厚生年金を受給していたとしても、遺族厚生年金は新たに申請しないと支給されません。『厚生年金は止められてしまったが、遺族厚生年金は入ってこない』状況にならないよう、最寄りの年金事務所で申請を」

 

■自営業には遺族年金がない!?

 

さらに、今回の設定とは異なるが、夫が自営業者だった場合は遺族年金自体が当てにできない。

 

「18歳未満の子どもがいて、夫が国民年金を25年以上納めていた場合は(1)の遺族基礎年金が支給されますが、子どもが18歳以上の場合は妻には何も支給されません。唯一、妻が65歳を超えていれば老齢基礎年金が支給されますが、それは妻本人に対する年金で遺族年金ではありません」

 

老齢基礎年金は、満額で年間77万9,300円(平成30年4月時点)。これだけで生活するのは無理があるといえるだろう。

 

■貯金は50代がラストスパート

 

そこで、足りない分を補填するのが貯金と保険だ。

 

「子どもが独立してから夫の定年までが老後資金準備のラストチャンスです。極端にいえば、貯金が十分にあれば、保険に入らなくても生活には困りません。生命保険は死後3年で時効になるので、夫が加入している保険は事前に把握しておきましょう。いっぽう、遺族年金も貯金もなく、生命保険にも加入していない場合は、働くなどの収入確保と生活費や住居費などの切り詰めをしていくしかありません」生活保護は最終手段となるが、部分受給も可能。まずは地域の福祉事務所で相談を。

 

近い将来、夫に先立たれたら、何はさておき、“先立つもの”の確保を!

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