「膝や腰の慢性的な痛みは、関節や筋肉の生活習慣病とも言えます。正しい姿勢で歩ける状態を維持するためには、これらを正しく鍛えることが大切です」
そう話すのは、理学療法士の笹川大瑛さん。笹川さんは“予約の取れない理学療法士”として人気で、健康に関する講座を開けば毎回満員になるほど。「腰が痛くて立ち仕事がつらかったが、痛みが気にならなくなった」(50代女性)、「膝が痛くて外出する勇気がなかったが、何時間も歩けるようになった」(80代女性)など、受講者からは喜びの声が寄せられるという。
こうした評判を呼んでいるのが、笹川さんが独自に開発した「関節トレーニング」(通称「関トレ」)。関トレが目指すのは、「関節を守る筋肉を鍛える」ことだ。
「人間の体は、どの関節も2つ以上の筋肉で支えられています。しかし、いずれか一方の筋肉をよく使うことからバランスが崩れて関節に負担がかかり、姿勢の悪化や、コリや痛みの原因になってしまうのです」(笹川さん・以下同)
背中が丸まったり、歩くと膝に痛みが生じるのは、弱くなった筋肉をもうひとつの筋肉がサポートしているためについた“体のクセ”のあらわれだという。
「とはいえ、いきなり筋肉をつけようと筋トレをしても、適切に筋肉を鍛えなければ効果は望めません。筋肉には鍛えるべき順番があるのです。関トレでは、インナーマッスルと呼ばれる体の深部にある筋肉をまず鍛えます。深部の筋肉がつくと、それを支えているまわりの筋肉も自然と使われ、正しい動作ができるようになり、全体の筋力が底上げされるのです」
腰や膝を支える筋肉には、(1)腸腰筋、(2)多裂筋・腹横筋、(3)内転筋、(4)内側ハムストリングスがある。腸腰筋は多裂筋・腹横筋と一緒に股関節を、内側ハムストリングスは内転筋と一緒に膝関節をそれぞれ支えている。
腰痛改善のためには、股関節を安定させることが重要となるため、腸腰筋と多裂筋・腹横筋の2つを鍛える。これらが鍛えられると、座骨神経痛、変形性股関節症などが改善され、ぎっくり腰や脊柱管狭窄症の予防にもなる。さらに、骨盤底筋も鍛えられることで、尿もれ予防にもつながるそうだ。
膝痛は、膝の軟骨がすり減るため起こるという考え方が一般的だが、笹川さんは、膝関節を安定させる筋力の低下が原因だと考える。その対策として、内転筋と内側ハムストリングスを鍛えることが肝心だ。
「関トレは、起床後や就寝前など、決まった時間に継続して行うことが何より大切です。何歳の人でも、正しく実践していけば、体の不調の改善がみられます。いくつになっても、イキイキと動ける体を目指しましょう!」