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6月2日、須磨寺(神戸市須磨区)で開催された「H1法話グランプリ」(以下、H1)。H1では宗派を超えて自薦、他薦で募った7組8人のお坊さんが参加し、持ち時間10分の中で、それぞれが趣向を凝らした法話を披露。それを聞いた観客と審査員が、1人3票ずつ投票。もっとも票が集まったお坊さんがグランプリとなる、まさに法話のコンテストだ。

 

「決して各宗派の優劣や、法話の良しあしを決める大会ではありません。『もう一度会いたいお坊さん』を選ぶイベントなんです」

 

そう話すのは、実行委員長を務める小池陽人さん(真言宗須磨寺派・須磨寺副住職)。もともとは、栃木県の若手僧侶らが研鑽のために実施していたH1。小池さんがそれにならい、昨年11月、地元の兵庫県で開催し、話題を呼んだ。

 

「次はいろんな宗派のお坊さんを集めて開催したい、と思い今回のために声をかけたのですが、そもそも仏教には『人と比べてはいけない』という大切な教えがある。そう説いている側が、こういう大会でグランプリを決めていいのか、と最初は反対されましたね」

 

しかし、若い世代の仏教や寺離れに対する危機感を持っていた小池さんは、その熱意を各宗派に訴え続けた。

 

「もっと多くの人が、お釈迦様の教えを知る場を作りたい……そんなわれわれの気持ちをくみ、批判からの防波堤になってくれたのは仏教界の重鎮・釈徹宗さんでした。釈さんは今回、審査員長の立場も買って出てくださったんです」

 

こうして迎えた大会当日、会場は満席だった。400枚のチケットは2日で売り切れたという。そんなH1に参加した、“エンタなお坊さま”たちを紹介。

 

■市村直哉さん(40)=真言宗豊山派・東光寺(栃木県)副住職

副住職、幼稚園の教諭、父親という三足のわらじを履く。親より先に逝った子どもが落ちる“賽の河原地獄”の真の意味を伝えた。

 

■小林恵俊さん(28)=天台宗・正明寺(兵庫県)副住職

最年少の健闘がたたえられ奨励賞を受賞。新妻が「寺とぬいぐるみ」の写真をインスタでゆるく発信し、寺のPRに貢献しているというほほ笑ましいエピソードを披露。

 

■中村建岳さん(47)=臨済宗妙心寺派・永正寺(愛知県)副住職

苦いコーヒーを“人生”にたとえ、ミルク(仏教)を注ぐことでホッと一息つけるカフェラテになる、と仏教の意味を説いた。

 

■ひのう姉妹 姉:日野 直さん(46)、妹:史さん(43)=真宗大谷派・西照寺(石川県)僧侶

姉がキーボードを、妹がボーカルを担当する音楽ユニット。「音楽だからこそ伝わることがある」として、メッセージを音楽に乗せて“法話ライブ”を行っている。

 

■安達瑞樹さん(44)=曹洞宗・長楽寺(兵庫県)住職

大学時代から落語に親しみ、その話芸を生かして“落語説法”を行う。自身がスズムシを飼育した経験から学んだ“命をつなぐ尊さ”を話した。グランプリ受賞。

 

■山添真寛さん(50)=浄土宗僧侶(京都府)

「浄土宗の劇団ひとり」を自称。この日は、“嫁姑問題”を紙芝居にした「毒入りのごちそう」を披露。人に優しくすることで相手も変わると説いた。審査員特別賞受賞。

 

この日、法話のイメージを覆すほどのライブ感に、会場は大盛り上がりだった。

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