10月の消費税増税に伴って、料金の改定が相次いでいる。そんななか、ヤマト運輸は4日、キャッシュレス決済と現金決済という払い方の違いで、料金を分けると発表した。宅配便にも押しよせるキャッシュレス化の波。経済ジャーナリストの荻原博子さんが解説してくれた——。
■現金決済だと割高に! スマホで送ると200円引き!
10月以降は基本運賃×消費税10%になりますが、ヤマト運輸は宅急便を送る際にキャッシュレス決済なら1円単位とし、現金決済は端数を切り上げて10円単位にします。例えば、消費税8%で907円(税込み・以下同)の配達は、消費税が10%になると、キャッシュレス決済では924円となり、現金決済だと930円。多くの場合、キャッシュレス決済が現金決済より安くなります。
また、ヤマト運輸は新しい割引サービス「宅急便はスマホで送れる。」を始めています。
スマホで、専用サイトから宛名等を入力すると、2次元コードが生成されます。荷物を直営店に持ち込み、2次元コードを読み取らせると、発送作業は完了。キャッシュレス決済で、最大200円引きになるというものです。
宅配料金を払うとき、特にドライバーは現金の取り扱いが煩わしく、配達後の清算に時間がかかることは、容易に想像がつきます。いっぽうキャッシュレス決済なら「ピッ」で完了。そのため、企業としてキャッシュレス決済を広めたい。だから、現金決済より割安にするのは一理あると思います。
ただ問題は、キャッシュレス決済の選択肢が少ないことです。ドライバー集荷のときに使えるのは、おもに「クロネコメンバー割」というヤマト運輸独自の電子マネーです。これを利用するためには「クロネコメンバーズ」という会員にならなくてはいけません。
また、「宅急便はスマホで送れる。」で割引になるのは、クロネコメンバーズ限定ですし、使えるキャッシュレス決済は「Apple Pay」とヤマト運輸独自の「クロネコペイ」、「ドコモ払い」や「auかんたん決済/auWALLET」に限られます。せめてクレジットカードが使えるなどの選択肢が増えないと、現状のままでは使いづらいと言わざるをえません。
消費税増税に関して、ほかの宅配業者の対応はそれぞれです。佐川急便は1円単位で、日本郵便は端数を四捨五入して10円単位で反映します。現金とキャッシュレスで料金を分けるのは、今のところヤマト運輸だけです。
しかし、キャッシュレス決済への流れは、もはや止まりません。今後は宅配業界に限らず、「現金決済よりキャッシュレス決済のほうが安い」料金設定が増えるかもしれません。また、10月から政府の補助金を使った「キャッシュレス決済のポイント還元」も始まります。
読者の皆さんには、「キャッシュレス決済は怖い、よくわからない」と思う方もいるでしょう。ですが、実際に使ってみると、「小銭をチマチマ取り出すより、簡単で便利」という声も聞かれます。
面倒な初期設定を慣れた家族などにやってもらえば、利用するのは簡単です。この機会に、キャッシュレス決済にトライしてみては。