10月1日の消費税10%への増税まであと4日。スーパーや飲食チェーンの動向に注目が集まるが、事業所の多くは中小零細の個人事業者が占めている。「上げられない」「5%だけ取るか」。中小の小売店がひしめく那覇市の商店街・栄町市場を歩くと、利益や売り上げ減少の不安を抱き、試行錯誤する事業者の声が漏れてきた。
昼すぎの栄町市場。店頭に並べられた総菜を買う地域住民の姿があった。店舗は総菜の店「かのう家」。総菜は100円、天ぷらは50円ほどで、消費税は販売価格に乗せていない。
消費税制では課税売上高が1千万円以下の事業者は納税義務が免除される「免税事業者」となっている。免税事業者は消費税を納税する必要がないため、販売価格に消費税分を転嫁しなくてもよい。ただ、仕入れ価格には消費税が含まれるため、販売価格に消費税を上乗せしないと事業者は利益が減ることになる。そのため増税は中小の事業者の利益に直結する。
かのう家は1人暮らしの高齢者でも買いやすいよう総菜は小さめのパックに小分けにして販売するなど努力を惜しまない。だが、その分、仕入れ費用はかさむ。店主の嘉納毅さん(71)は「10円でも上げたら売れなくなる。なかなか値段は上げられない。様子を見るしかない」と厳しい胸の内を明かした。
増税に合わせて方針転換を図る店舗も出ている。瀬長共子さん(80)と夫の金一さん(76)が営む「ともこ化粧品店」は販売価格に消費税を上乗せしてこなかったが、今回、常連客には「心苦しいが10月からはいただく」(金一さん)と説明している。ただ10%ではない。客の負担を少しでも抑えようと半分の5%を上乗せする考えだ。店内で早めの夕飯を食べていた金一さんは「あまり金もうけを考えてないからいいんだよ」と苦笑いする。
個性的な店が集まる栄町の飲食店は対応が割れた。老舗居酒屋「栄町ボトルネック」は増税分を価格に転嫁する方向で検討しているといい、利用客の利便性も考慮しキャッシュレス端末も導入した。現在、利用者は1割に満たないが、店長の伊禮直満さん(44)は「これから増えるかも」と話す。キャッシュレス端末を導入する飲食店は増えており、変化の波が押し寄せる。
ただ、市場内の別の居酒屋関係者からは「日銭を稼がないといけないので、現金でないと厳しい」とキャッシュレス対応が困難との声も聞こえる。この店は10月以降も価格は据え置く方針。「今後は薄利多売の小さい店舗ほど厳しい」と危機感を示した。(仲村良太)