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コロナ騒動により長引く休校で、にわかに検討され始めた「9月入学」。休校による学習の遅れを取り戻すため、14日に行われた会見で安倍晋三首相も「9月入学も有力な選択肢の1つだろうと思いますが、前広に検討していきたい」と語った。そもそも、9月入学って何? どんなメリットや問題があるの? 専門家に聞いてみた。

 

【Q1】心配されるデメリットは?

 

すでに9月入学を導入している一部の大学もあるが、「これは主に留学生を受け入れるためのもので、全国的に導入されれば、入学は9月入学に一本化される可能性が高い」

 

こう話すのは教育評論家の石田勝紀さんだ。心配なのは、現在の浪人生だろう。来年4月からの入学を目指して勉学に励む彼らは、もう余分に半年もの間、浪人生活を続けることになる。本人たちの精神的負担に加え、予備校の費用など、保護者の金銭的な負担も出てくる。

 

また、教育研究家の妹尾昌俊さんはこんな懸念も。

 

「来年の4月から就職して、収入を得る見込みだった、最終学年の生徒や学生は多くいる。しかし、来年の8月卒業になれば、就労が約半年遅れてしまいます。現在、新型コロナウイルスのために収入が減っている世帯は多いのに、就労が半年近く遅れると、一層困窮する家庭が出てしまう可能性があります」

 

さらに、待機児童の問題も。保育園に入れず、子どもが小学校や幼稚園に上がるタイミングで、職場に復帰したり、新たに働きに出ようと思っていた保護者も、その機会を遅らせざるをえない。

 

「9月入学を否定はしませんが、その前にやるべきことが山積みです。新制度への移行に力を割くことで、本来すぐにやらないといけないことがおろそかになってしまうのを懸念しています」(妹尾さん)

 

【Q2】現状を打破する9月入学以外の対処法は?

 

「現行制度でいくなら、来年3月の年度終わりまでに『駆け足でカリキュラムを終わらせる』のではなく、一部を『次学年に繰り越し』たり、『カット』したりするのも有効だと思います。「学習指導要領」を弾力化するほうが、9月入学の導入より混乱は少ない」(妹尾さん)

 

ただしこの場合、最終学年はどうなるのかという課題が残る。

 

「カットされた部分で、どうしても学びたいものが出てくれば、大学などで学び直せばいい。失われたぶんを挽回するチャンスは、“生涯学習”の世の中にはあります。社会的なコストも9月入学よりも低くなります」(妹尾さん)

 

「女性自身」2020年6月2日号 掲載

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