「腰痛の8割以上は、“心配いらない腰痛”です。内科的な病気や神経痛が原因ではない場合、自分で治すことも可能なのです」
そう語るのは、腰痛予防の第一人者である松平浩先生。
ただし「転倒や尻もちをついたあとに腰が痛みだした」「痛みやしびれがお尻からひざまで広がる」「じっと寝ていてもうずく」などのケースは、骨折や椎間板ヘルニア、内臓の病気などが原因になっていることもある。腰痛がある場合は一度、病院で検査をして、“心配いらない腰痛”かどうか確認しておくことが重要だ。
「心配のいらない、つまり、明らかな病気や骨折のない腰痛は“腰痛貯金”の蓄積によって起こります。前かがみや猫背の姿勢を長く続けていると、背骨にはさまれた椎間板の中央にあるゼリー状の髄核がうしろに移動することがあります。これが“腰痛借金のある状態”で、借金が積み重なると、慢性的な痛みが出るだけでなく、ぎっくり腰や椎間板ヘルニアなどになる可能性が高くなるのです」
さらに今、新型コロナウイルス感染拡大の影響で、腰痛借金がかさみやすい状況になっている。
「フロアに座布団を敷いて長時間作業していると、てきめんに腰痛を起こすように、机や椅子などの環境が整っていない在宅ワークでは、腰に負担がかかることも。また、外出を控えることによる運動不足、さらに、感染不安などの心的ストレスも、腰痛を悪化させる可能性があるのです」
腰痛借金を返済し、痛みを解消するために大事なことは、「動いて治す」こと。
「腰痛を経験すると、痛みの恐怖や不安から、日常生活でも無意識に腰をかばうようになります。私たちの研究では、安静にしすぎることで、腰痛が再発、慢性化しやすくなることが判明しています。体操やストレッチの目的は、家事やデスクワークで悪くなった腰の状態をリセットすること。腰を動かしても平気だという経験は、痛みに過敏になっている脳をリセットする効果もあるんですよ」
腰痛は休んで治すーーそんな古い考えは捨て、さっそく動かそう。
「女性自身」2020年7月28日・8月4日合併号 掲載