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「現在の歯科治療においては、安易に歯を抜こうとする風潮を感じます。それは、歯を残すだけの治療技術を歯科医が持っていない、インプラントを埋め込む手術のほうが歯科医にとって儲かる、という側面があるからです。しかし、歯を失うことで、認知症、心疾患、脳疾患のリスクが高まります。また、高額なインプラントを入れたとしても、未熟な技術による“失敗例”も聞かれるため、歯科医選びは重要です」

 

こう警鐘を鳴らすのは、『歯は抜くな』(文溪堂)の著書もある、岩田有弘歯科医院の歯科医・岩田有弘さんだ。

 

「初診時に年齢が45〜54歳の場合、日本人が18年間で失う歯の本数は6.12本(’05年歯科疾患実態調査)。しかし、当院でメンテナンスをしている患者さんは、わずか0.2本にとどまっています」

 

岩田さんが行う治療は保険診療ではカバーしきれないため、初診で約10万円もの自由診療となる。それでも患者が途絶えないのは、駆け込み寺として「歯を抜かない」選択肢を示してくれるためだ。

 

「とはいっても、通常の歯科医でも十分にできる治療をしているだけ。多くの歯科医がそれらを怠っているのです。たとえば根管治療といって神経を抜いた歯の根を掃除するといった、歯科医なら誰でもできるような治療があるのですが、実際には根管治療を怠る歯科医が多いようです」

 

では、自分の歯の治療にしっかりと向き合ってくれる歯科医は、どう見分ければよいのか。岩田さんに教えてもらった。

 

【1】クリニック内は清潔か

 

「クリニックの中をキレイにできない歯科医が、きちんとした歯の治療を行えるとは思えません。トイレなども清潔に保たれているか、しっかりチェックしましょう」(岩田さん・以下同)

 

【2】「歯を抜く」以外の選択肢を提示してくれるか

 

「レントゲンなどをしっかり見せて、納得できる説明をする歯科医を選ぶ。いきなり『削りましょう』『抜きましょう』と言って、ほかの選択肢を出さない歯科医はもってのほか。インプラントのような高額治療を強く推奨する歯科医もあまりおすすめはできません」

 

【3】保険外の治療を快くやってくれるか

 

「(虫歯の原因となる)ミュータンス菌検査などの保険外の診療も、オーダーすればやってもらえるのかも見極める材料になります。また、セカンドオピニオンを嫌がるような歯科医はNGです」

 

【4】セルフメンテナンスの指導があるか

 

「歯科衛生士による、日ごろのメンテナンスの指導はよい歯科医を選ぶうえで必要条件です」

 

他院の歯科医が詰めものをした歯の根に不具合が出て、何年も痛みを我慢しているうちに、体のほかの部分に症状が出た患者も岩田さんのもとに駆け込んできたという。

 

「腕がしびれたり、背中が痛くなったり、食事中にお茶碗が持てなくなったりしたそうです。レントゲンを見ると、根っこの治療が不十分でした」

 

ほかにも、歯に痛みがあり周辺の歯茎が腫れあがり、「抜くしかない」と他院で言われた患者の歯を詳しく診てみると……。

 

「歯の中で、治療用の医療器具が折れ曲がっていました。レントゲンを見ればわかるはずですが……。根管治療を行い、一時的に歯を抜き、さらに処理を施し、抜いた歯を元に戻すという治療を行うと、痛みも腫れも治りました。ただ、以前と同じようにかむことはできません。そういったマイナス面もしっかり患者さんに伝え、治療方針を決めていきます」

 

「女性自身」2021年2月2日号 掲載

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