「バーゲンで割引になっているから購入したのか、それとも本当に必要なモノを買い求めたのか……。無意識にかさんでいる“使いグセ”による出費を見直すと、支出を抑えられるようになります」
こう話すのは、行動経済学の観点から支出を減らすノウハウを解説する消費経済ジャーナリストの松崎のり子さんだ。コロナ禍でライフスタイルにも変化が生じて1年以上が経過しているが、「出費が増えた」と嘆く人は多い。ステイホームで人と会う機会は減ったと思いきや、デリバリーやテークアウトの出費、インターネット通販の使用、プチぜいたくの積み重ねなど、落とし穴は多いもの。
松崎さんは、自分がどんなとき、どんな環境下で買いに走ってしまうのか“使いグセ”を洗い出すことで、“ムダな出費”を食い止めることができるとアドバイスする。
自分はムダな消費はほとんどしていないはず、と思う人も、まずは次のチェックリストを確認してみよう。無意識の習慣や思い込みに「ムダ」は潜んでいる。1つでも当てはまったら要注意。3個以上だと、支出を見直す余地がありそう。6個以上は重度の使いグセが懸念されるので早めに対策を!
【あなたの「使いグセ」チェック】
□ 特に用がなくても、しょっちゅう立ち寄る店がある
□ 5%オフ、10%オフ、1,000円割引券などのクーポンが好き
□ メルカリなどのフリマアプリで売ったり買ったりしている
□ スマホに入っているアプリは、契約した当時のまま
□ 使っていないクレジットカードがある
□ 電子マネーはオートチャージ設定にしている
□ 100円均一ショップが好き
□ 3足で1,000円、3着買うと30%オフなど、まとめ買いでオフになる買い方が好き
□ 夜中にネットショッピングをすることが多い
□ 家の中にモノが多い
□ 生命保険は結婚した当時に入ったもののまま
□ 家族で家計は別にしている
「ふらっとのぞいてしまうお気に入りの店がある人は要注意。特別必要でもないものを買ってしまう危険性が高まります。また、クーポンなども必要なものを買うのではなく『30%オフになるし、せっかくだから』との動機で使うのでは本末転倒です」(松崎さん・以下同)
また、家の中を見渡してみると一目瞭然。モノが多く、整理の行き届いていない家庭は、似たようなものを持っているにもかかわらず、重複買いする傾向があるので気をつけるようにしたい。
「所有物に限らず、契約などもライフスタイルに合わせて定期的に解約・見直しが必要です。クレジットカードや保険の契約の経年放置も、ムダ遣いの温床です」
松崎さんがいちばん危惧するのは、コロナ禍で急速に普及したキャッシュレス決済だ。
「お金は財布から出すことで、使った“痛み”を感じることができます。しかし電子マネーのオートチャージやカード決済では使いすぎに気づくことができません。明細書も多くがデジタル化され、目に触れる機会がないこともやっかいなところです」
電子マネーによる出費に歯止めをかけるためには、毎月使えるお金を並べて体感してみるのがよいと松崎さんは話す。
「『これしか予算がない』のだということを目で実感すること。実際に現金で眺める10万円は、キャッシュレス決済で使われる10万円とは重みが違います」
お金の重みを実感したら、次はどんなものにお金が消えているのか具体的に洗い出すことが大切だ。
そこで松崎さんが提案するのが、「使いグセ家計簿」。やり方はいたってシンプルだ。まずすべてのレシートを箱などに保管し、1週間ほど冷却期間を置いてから、1枚1枚眺めていくこと。ネットショッピングなどで使ったお金は、配達時に届く明細などをレシートの代わりに使用する。
「買った直後はよい買い物をした、と思っても、後日冷静に向き合うと、じつは必要のなかった出費だったと気づくことは多々あります」
1週間ごとに見直し、「ムダだったかも」、あるいは「結局開封もしていない」という買い物を手書きで記入していくだけ。手書きで支出額と向き合うことで、“なんとなく”がけっして小さな額ではないことが見えてくる。
「ママ友とのランチは『ちょっと高いお店だから断りたいけれど……』と思いつつも付き合ってしまうなど、実は後悔している行動パターンと向き合うことも大切です」
家族から「またムダな買い物をして」などととがめられるとそこから目を背けてしまいがちだが、「これは不要だった」「あまり効果がなかった」と自分で納得することが、使いグセを改めるきっかけになるのだと松崎さんは言う。こうして洗い出していくと月々1万円前後、多い人では3万円程度支出を抑えられることもザラだとか。
「使いグセ家計簿で見えてきた支出を反省しつつ、そこで削減できた費用や、家計で余裕ができた分を貯金に回してみてください。使いグセが深刻な人は、予想以上の額になるはずです。本当に必要な買い物をするのはもちろんOKです。惰性の買い物だったり、習慣化してしまっている浪費に自分で気づき、改めることが大切です」
ネットショッピングやスマホ利用がいっそう広がるなか、自分のお金の管理に認識のズレはないか、いちど鉛筆を手に取って振り返ってみよう。
「女性自身」2021年5月4日号 掲載