「娘が天国に旅立ってしまったあと、みんなの中の『椿』が消えてしまうのが怖くて。だから、娘が生きた証しを作ろうと思ったんです」
井上みやびさん(37)は、A4サイズ、84ページに、細かな文字がびっしりと詰め込まれた冊子を手に、強い口調でこう語った。目にはうっすらと光るものが浮かんでいるようにも見える。
この日、記者が訪ねたのは岡山市郊外の一軒家。3年前に再婚した夫・晋志さん(43)と長男・楓くん(7)、そして、みやびさん……、家族で囲むダイニングテーブルの上に、ピンクのかわいらしいテディベアが、ちょこんと座っていた。
「生前、娘がいつもそばに置いてかわいがっていたもの。彼女が亡くなってからは“椿ベア”と名づけて。いまは私たちと、いつも一緒です」
みやびさんの長女・椿さんは生後すぐ、心臓に疾患があることが判明。長く苦しい闘病の末、昨年2月、14年という短すぎる生涯に幕を下ろしたのだった。
「でも、椿はずっと頑張って、すごく頑張って生きてきたんです」
懸命に生きる娘のことを知ってほしいーー、そんな思いで、みやびさんは数年前から、SNSに椿さんの闘病のことを投稿していた。
娘の最後の日々を切々とつづり続けた母の投稿は、たくさんの人々の涙を誘ったーー。
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