この季節、気候の変化と同じタイミングで頭痛やめまいなど体の不調を訴える人が増えてくる。
「体調不良をもたらす気象の変化には、気圧と湿度、気温の3つがありますが、このうち患者さんの数が最も多いのは『気圧の変化』です。いまの季節は頭痛だけでなく、めまい、全身倦怠感、首・肩こりといったさまざまな症状を訴える人が急増します」
そう語るのは、せたがや内科・神経内科クリニックの久手堅司院長だ。’16年に同クリニック内に「気象病・天気病外来」を開設してから、これまで延べ5千人以上の診察にあたっている。この時季に体調トラブルを訴える人が増加する背景を、久手堅先生は次のように解説する。
「不調が出やすいのは、発生した台風が直撃する前と通過した後です。また、天気はよくても、台風が遠くで発生したとき、近づいてくる途中などでも不調を感じる人がいます。
人の体の器官のうち、気圧の変化に反応するのは耳。耳の鼓膜の内側にある内耳は、外側からの圧力につぶされないように、内側からも同様の圧力で押し返す働きをしています。
内耳で気圧の変化を感じると、脳の中枢に信号が送られ、自律神経を介して体を順応させようとします。このとき、自律神経の乱れがあると、さまざまな不調が出てきやすくなるのです」(久手堅先生・以下同)
気象病の症状は人によってさまざまだが、最も多くみられるのは頭痛だという。特に更年期世代の女性は体内のホルモンバランスが崩れているため、気圧の変化によるダメージを受けやすいそうだ。
「同時に、悪い姿勢でいたまま骨格がゆがんでいくと、頭部と内耳の位置が安定しにくくなってしまうので、自律神経が乱れやすくなります。ふだんから姿勢に注意して、睡眠時間をしっかりとるなど規則正しい生活を心がけると、気象病の症状を徐々に改善することができます」
頭痛や肩こりなどの不調を手軽に改善するために久手堅先生が推奨するのが、タオルで首を伸ばすストレッチ。自律神経の中枢といわれる第1頸椎と第2頸椎のつなぎ目をストレッチすることで、自律神経が整ううえ、頭の位置を正しくリセットできて、首こりや肩こりの症状が軽くなるという。
やり方はとっても簡単。用意するものはフェースタオル1枚だけ。細長く4つ折りにしたタオルの両端を持ち、後頭部を斜め上に30秒間引き上げる。次に、斜め下方向に同じく30秒間引っ張ろう。合わせて1分。1日1回、継続して行うとよいそうだ。
「起床後など、毎日時間を決めて行うと続けやすいでしょう。また、回数の制限はないので、日中になんだか重だるい、こりがひどい、などと感じたら、そのつど行ってもかまいません。首を痛めないように、角度や強さは無理のない範囲で行うようにしましょう」
気象条件の変化からくる不調を吹き飛ばすためにも、1日1分のタオルストレッチを習慣にしよう。