「今回演じた主人公は、これまであまり見せたことのないキャラクターです。みなさんにどんなふうに受け止められるのかなという不安もありましたが、僕自身、それが新しいチャレンジでもあり、いい経験にもなりました」
韓国ドラマ『最悪の悪』(ディズニープラス スターにて配信中)で主演を務めるチ・チャンウク(36)。韓国が誇るノワール・クライムアクションの最高峰と評判を呼ぶ本作で、犯罪組織に潜入する刑事パク・ジュンモを演じている。ドラマの配信記念イベントのために来日したチ・チャンウクは、共演者のウィ・ハジュン(32)、イム・セミ(36)とともに本誌の取材に応じてくれた。
物語の舞台は1990年代の韓国・江南。2階級特進を条件に麻薬密売組織に潜入した刑事パク・ジュンモは、リーダーのチョン・ギチョル(ウィ・ハジュン)の信頼を得るために組織に順応していこうとする。また、ジュンモの妻で麻薬保安官であるユ・ウィジョン(イム・セミ)も自ら志願して夫を助けるために奮闘するのだが……。
チ・チャンウクとウィ・ハジュンのアクションシーンは本作の見どころの一つ。今回、初めて本格的なアクションに挑戦したという2人だが、どのような気持ちで撮影に臨んだのだろうか。
「撮影中は、ジュンモならこの状況でどんなことを考えるのかということを深く掘り下げることに集中しました。彼ならではアクションを最大限に表現するためにアクション監督と対話を繰り返して作り上げました」(チ・チャンウク)
「ギチョルのアクションに関しては、できるだけ簡潔で、素早い動きをしたいと考えていたので、ボクシングの動きをベースに作り上げました。そのときどきの状況に応じて、とても壮絶であったり、感情的であったり、そういうさまざまな表現ができるアクションを心がけていました」(ウィ・ハジュン)
憧れたアクション俳優について、「いない」と答えたチ・チャンウク。その理由は?
「実は、あまりアクションが好きではないんです。ただ、アクションと呼んでいいのかわからないのですが、日本の作品で相撲の力士を描いた『サンクチュアリー聖域―』は見たことがあって、面白かったです」
いっぽうウィ・ハジュンは、幼いころは漫画を読んだり、おもちゃで遊んだりするよりも自然のなかで体を動かしているほうが好きだったという。
「僕はブルース・リーとジェット・リーが好きで、マネしてアクションごっこをしていたくらいです(笑)」
またイム・セミは、2人の撮影現場を見るため、休みの日にもよく顔を出していたのだとか。
「私自身はあまり体を使うシーンはないので、心だけでもと思って応援するようなつもりで現場に行っていました。みなさん大変なシーンの連続なのに、誰がいちばん笑わせられるか、もっと楽しい雰囲気にするにはどうしたらいいか、と競うように面白いことを言い合って、まるでコメディーでした(笑)。武器を持ち、血のりなどの特殊メークをしているようなアクションシーンでも、撮影の合間は常に笑顔で、そこかしこから笑い声が聞こえてきました。また、私のアクションはそれほど多くないのですが、とても重要なシーンとなりますので、そこを見守っていただけるとさらにドラマを楽しんでいただけると思います」
ギャングに扮し、潜入捜査を続けるジュンモだったが、やがてギチョルらはジュンモに疑いを持ち始め、ウィジョンを含めた3人は逃れられない運命の渦に巻き込まれることになる。
「作品自体とてもディープで緊迫感があり、常に張り詰めた状態が続いていました。ジュンモは最後まで笑うシーンがありません」とチ・チャンウクが語るとおり、視聴者はスリリングな展開にぐいぐい引き込まれていくこと必至だ。
8カ月にわたった撮影期間。ジュンモを演じることはどのようなチャレンジだったのか、改めてチ・チャンウクに聞いた。
「これまでも絶えず、自分なりの新しいチャレンジというのを試みてきました。そのなかで、いい意味で監督の考えなどを裏切るような表現ができたときの、そこから湧き上がる快感というのはたまらないんです。『最悪の悪』でジュンモを演じるというのは、何か新しいものを作り出したいという思いに駆られ、新しい刺激や反応を絶えず探している、そんな作業でもありました。そして、自分がこれまで演じたことのない姿というのを、自分の中で模索しながら引き出していこうとしていた期間だったと思います。そのような意味でも、視聴者のみなさんには、『これは何か新しい感じがする』というふうに受け止めていただけるのではないかと期待しています」
インタビュー中は終始、互いのコメントに笑顔を見せ、仲睦まじい様子が印象的だった3人。来日初日の夜はどのように楽しんだのだろうか。
「僕は、みなさんと一緒に食事をした後、マッサージをしました。日本にはよく来ていますが、日本食は本当に美味しいですよね。日本では散歩をしたり、買い物をしたり、音楽を聞いたりして過ごします。そして日本のスパも大好きですし、ラーメンも大好きです(笑)」(チ・チャンウク)
「昨夜は僕もみなさんと一緒にご飯を食べて、その後は少し疲れていたのでホテルで休みました。今回の来日は、何よりも日本のファンのみなさんに会うのが初めてだったので、そのことをいちばん楽しみにしていました。日本はプライベート旅行でも来たことがあり、大好きです。チ・チャンウクさんがおっしゃったように、和食も美味しいですし、街を歩きながらショッピングするのも楽しい。ただ、僕はスパには行ったことがありません(笑)。時間があったら、またぜひ旅行で日本に来たいと思います」(ウィ・ハジュン)
「私はコロナが終わってから日本に来るのは今回が初めてです。昨日は、ホテルでスタッフの方たちと泡の出る缶ビールを飲みながら、『頑張ろうね』と励まし合いました。今朝は、ホテルの周辺は歩いてみましたが、とても気持ちよかったですね。マラソンが好きなのでランニングにとてもいい場所だなあと思いました。また、’19年に秋田を旅行したことがありまして、そのときのことを思い出しながら、日本ってやっぱりいいなと思いながら1日を過ごしました」(イム・セミ)