再び躍動する欽ちゃんの隣には慎吾が——。99回大会には全国から3292組が応募。2歳から83歳までの34組が本選に出場した(撮影:加治屋誠) 画像を見る

「やっぱり、テレビって面白い。最高だよ」

 

3年ぶりに復活した『欽ちゃん&香取慎吾の全日本仮装大賞』(日本テレビ系)の収録を終えた萩本欽一(82)は興奮冷めやらぬ様子で語り始めた。相棒・香取慎吾(46)への期待、3年前に逝去した澄子夫人への想い、「偶然で数字(視聴率)なんて行かない」という独自のテレビ哲学とはーー。

 

「今回で私、この番組終わり」

 

2021年2月6日放送の『仮装大賞』で萩本欽一は突如、降板を口にした。何があったのかーー。

 

「体が持たないから、もう無理だと思ったの。80近くなってから、収録の終盤に疲れて『あと何組?』と聞くようになった。『8組です』と言われると、だいぶあるな……って。僕は二郎さんとのコント55号で、舞台を駆け回って世に出た。動けない欽ちゃんが座ってテレビに出るのは、自分が許さないのよ」

 

勇退宣言から数カ月後、萩本はともに司会を務める香取と対面し、今後の番組について話し合った。香取が振り返る。

 

「欽ちゃんに『仮装は慎吾ちゃんに託す』と言われたので、『できません』と断りました。何度も『慎吾にだったら』と繰り返されましたけど、『できません』って。包み隠すような言葉は欽ちゃんには通用しない。いつも、短く削ぎ落として伝えます。うれしいし、愛も感じますけど、託すものではないかなと」

 

局には「再開してほしい」という視聴者の要望が何百通も届いていた。番組はアプローチを繰り返したが、萩本の意思は固かった。

 

「80過ぎたタレントにテレビ出てくれって、幸せな話ですよ。だから、マネージャーに言わせるんじゃなくて、ありがとうって直接伝えたいと思って会ったの」

 

編成局長とプロデューサーが事務所を訪れると、萩本はまず感謝を述べ、「もう出るつもりないからね。あとは慎吾ちゃんに頼んでよ。僕もうれしいから」と断った。 「そしたら、『“欽ちゃんが出ないなら僕も出ません”とハッキリ言われてます』って。慎吾も頑なだった。かわいいヤツだなと思ったよ。憎たらしいなとも感じたけど(笑)」

 

萩本が何度拒んでも、なぜ香取の心境は変わらなかったのか。

 

「どうして? と聞かれても不思議なぐらいに、それしか考えられなかった。僕は欽ちゃんに教えられて、テレビの世界で生きてきた。香取慎吾の選択としてはそれ以外ないと思う」

 

周囲の熱意に萩本は折れた。

 

「どうにもならないんだもん。だから、応援するって言ったの。そしたら、プロデューサーが『出演の仕方を考えます』と帰っていった」

 

自らの限界に挑戦する新たなドラマの幕が開いたーー。

 

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