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「政府備蓄米の販売数量は21万トンtとし、3月半ばには引き渡しを開始します。

 

今回の備蓄米の売り渡しが米の流通の円滑化、ひいては国民生活の安定に資するようになるよう、迅速に手続きを進めてまいります」

 

2月14日、江藤拓農林水産大臣は記者会見でこう発言した。

 

売り切れ続出で店頭からお米が消えた2024年秋の“令和の米騒動”勃発以来、半年がたつが、いまも米の価格は落ち着くどころか、上がりっぱなしだ。

 

総務省が発表した東京都区部のコシヒカリ5kgの小売価格は、2025年1月が4,185円。1年前の2024年1月は2,440円だった。

 

前年同月比で、なんと1.7倍も値上がりしたことになるのだ。

 

「昨年の段階で、政府は『新米が出回る時期には落ち着く』という楽観的見通しを立てていました。

 

しかしそれが見事に外れ、さらに値上がりが続いてしまっているんです」(全国紙社会部記者)

 

■単純に米の生産量が需要に足りていないだけ

 

農林水産省によれば、2024年の米の生産量は約679万tで、前年より約18万t増えた。

 

しかし集荷量(おもに農協が仕入れた量)は、約215万tで、前年比で約21万tも減っている状況だ。

 

政府はこの21万tを備蓄米の放出によって「国民生活の安定に資する」とする。

 

つまり「米が安く買えるようになるかもしれない!」と気を持たせるのである。

 

この江藤大臣の「備蓄米放出」宣言について、神奈川県の米穀店店主は次のように話す。

 

「ウチは問屋を通さず、生産者さんから直接買ったお米を厳選して販売しています。

 

スーパーの店頭価格に比べて、もともと若干高めでしたが、スーパーの価格がかなり上がったため、いまは、ウチの価格のほうが安くなっています。

 

正直、今回の『21万t放出』だけでは、スーパーの店頭価格は、ほとんど下がらないと思いますね」

 

そもそもなぜ、日本にたくさんあるはずの「主食」のお米が不足しているのか?

 

そして、「備蓄米放出」で、本当にお米の価格が下がるというのだろうか?

 

流通事情に詳しい経済評論家の加谷珪一さんに、話を聞いた。

 

「まず、いま米の価格がこれだけ上昇しているのは、単純に『米の生産量が需要に足りていないから』です。

 

その最大の要因は、日本人の食生活が欧米化したことで、米の消費量が著しく減ってきたこと。

 

約50年前に比べるとほぼ半減しており、約20年前と比べても2割も減っているんです」

 

農水省によれば、1人1年当たりの米の消費量は、1970年度に約95kgだったものが、2000年度に約65kgに減り、令和に入って2020年度は約51kgと、まさに50年前に比べて半減してしまっているのだ。

 

そして、かつて導入されていた、政府が税金を投入して米の価格安定を図る「食糧管理制度」が1995年に、水稲自体を減らす「減反政策」が2018年までに、それぞれ廃止されたことも関係しているという。

 

「国が米の価格の安定を図らなくなったため、米を生産しすぎれば当然、米の価格は下がってしまいますので、米農家は生産量を調整する方向になります。

 

昭和の時代に比べて、日本の米市場は極端に小さくなってしまったというのが現状です」(加谷さん、以下同)

 

需要が少なくなって、それに見合う供給量になっただけであれば、価格はそれほど変動しないかもしれないが、昨今そこに大きく影響を与えているのが訪日外国人客=インバウンド需要なのだという。

 

「特にコロナ後は、かつてのインバウンド需要が戻ってきて、来日した外国人が日本でお米を食べる機会が激増しています。

 

かつてのように、日本人全体で大きな消費量があった時代なら、インバウンド需要の増加もさして影響しなかったのでしょうが、米消費が激減してしまったいま、米農家は急な増産などできません。よって、もはや供給が追い付かないんです」

 

そんな状況に陥っているなか、江藤大臣は「米はある。どこかにストックしていると考えざるをえない」と1月末の会見で発言。

 

これは“消えた21万t”として一部の業者が「買い占め」に動いている可能性を示唆しているようにみえるが……。

 

「新規参入業者が“転売”目的で買い占めているというのは、政府への批判を逸らすための誘導的な推測にも思えます。

 

レストランなどの外食産業は、『ライスは売り切れです』ではとてもビジネスにならず、信用問題ですので、ふだんから米を多めにストックしています。

 

卸業者もそのために、あらかじめ買いだめしておいて外食産業に卸す。これらは健全なストックのはずです」

 

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