「映画出身のボクは、当時、テレビを格下に見てしまっていた部分があったんです。ところが『キイハンター』は丹波哲郎さんや千葉真一さん、野際陽子さんなどの大スターが出演して、要所要所で深作欣二さんが監督として参加するなど、映画と変わらない。ドラマは回を重ねるごとに人気が出て、アイドル雑誌の人気タレントランキングで“谷隼人”がショーケンやジュリーに並んだりしたので、すぐにテレビの力はすごいと見直したんですよ」
こう振り返るのは、谷隼人さん(79)だ。ロケ先のホテルにはファンが大挙し、消防車が出動して「これ以上、混乱が続いたら放水します」という対応があったほど。
「朝から翌朝まで仕事することも当たり前。寝られるのは車や飛行機での移動中くらいでした」
そんな状況でも、主演の丹波哲郎さんは悠然としていた。
「9時集合でも、10時くらいにパジャマ姿で現れるんですよ。しかもすでに終わった台本を持って。その場で『今日の犯人は○○で』と説明を受け、カンペを用意してもらうんですが、いざカメラが回ると、とんでもない存在感を放つ。『熱い味噌汁を持ってきてくれ』と言っておきながら、しっかり冷まして飲む丹波さんの姿を見て“やっぱりスターはやることが違う”って感じていました」
千葉真一さんとはアクションシーンに挑戦。
「車から飛び降りて前転で着地するなどのシーンではけがもしました。当時、高倉健さんとジムに通って体作りをしていたから、アクション初心者でしたが大事故にはなりませんでした」
とはいえ、ヘリからつり下げられた縄ばしごをつかみ、犯人のクルーザーを追う海のシーンでは命がけだった。
「縄がぬれて滑るんです。カメラが回っているときは平気でしたが、カットがかかると、とたんにブルブル震えてね。後で聞くと、千葉さんはしっかり命綱を使っていたみたいです。それも2カ所も(笑)。千葉さんから直接教えられることはありませんでしたが、間近でアクションを見て、学んだんですね」
野際陽子さんのことは「お姉ちゃん」と呼び、ロケ先で飲みに行くことも多かったという。
「ロケのとき、夜、飲みに誘おうと野際さんのホテルの部屋に入ろうとしたら、ベッドルームで猫足のように音も立てずに身を隠す人影が! その瞬間“あの動きを、俺は知っている”と確信。それからしばらくしてからですね、千葉さんと野際さんがご結婚されたのは」
『キイハンター』(TBS系、1968~1973年)
国際犯罪天国といわれる大都会の東京を舞台に、警察の手には負えない事件を解決するため、ボスの黒木鉄也(丹波哲郎さん)が結成したキイハンターのメンバーが悪と戦う物語。壮大なスケールの物語とアクションで大ヒットした。番組スタート時はなんとモノクロ!
【PROFILE】
たに・はやと
1946年生まれ、鹿児島県出身。東映のアクションスターとして活躍し、「和製アラン・ドロン」と称された。『風雲! たけし城』の攻撃隊長としても広く知られる。
画像ページ >【写真あり】遅刻しても、セリフを覚えていなくても演技は別格だった昭和の大スター(他1枚)
