夫をダンダンと読んでいる×華さん(撮影:加治屋誠) 画像を見る

かたや、長いアシスタント生活を経てデビューした苦労人。かたや、描き始めてすぐデビューした天才肌。どぎついキャラと徹底した描き込みでカルト的な人気を誇る夫と、やわらかい絵で描かれる作品が次々と映像化され、漫画賞も受賞した妻。

 

経歴も作風も、まったく違う2人の出会いは“セックスフレンド募集”という常識外れのものだった――。

 

■多くのことが対照的な夫婦

 

スラスラスラ……。リビングのテーブルで、何枚もの白い紙を広げ、迷いなく漫画のネーム(下書き)を描きすすめているのは、沖田×華さん(47)。漫画未経験ながら、26歳でデビューしたかと思うと、テレビドラマ化された『透明なゆりかご』(講談社)や『お別れホスピタル』(小学館)など、ヒット作を連発している人気漫画家だ。

 

ペンの音が心地いいのか、愛犬、ミニチュアシュナウザーのピノがソファで腹を見せて眠っている。

 

ドアを隔てた隣室で、苦悶の表情でパソコンで漫画の仕上げ作業をしているのは、夫の桜壱バーゲンさん(62)。幼少期から漫画家を志し、長いアシスタント生活を経て、29歳でデビューした苦労人だ。実話誌を中心に活躍し、代表作に、フランスで翻訳本も出版された『絶望の犯島』(双葉社、櫻井稔文名義)などがあるが、現在話題になっているのが、「マンガSPA!」(扶桑社)でWEB連載が終了したばかりの「毎日、病んでます」。

 

稼ぎも話題作も多く、光り輝く×華さんと対照的な、影に潜む自分の生活を描いた実録漫画だ。

 

「漫画を描くスピードも対照的。自分が原稿を1ページ描く間に、沖田は20ページくらい描きあげるんです。自分は目を描くにも何回も描き直したり、1コマに1日かけたりするもんで」

 

天才肌で、ちょっと風変わりな×華さん。この日は取材とあってごく普通の装いだが、ふだんは裸族でパンツもはかないのだとか。

 

「私、介護脱毛して、毛ないんですけど。どう? って桜壱さんに聞いたら“腐ったみかん”とか言われて(笑)。たとえが的確すぎて、すごい感動したんですよ」

 

あっけらかんと笑う。家事も片付けも苦手で、自分の部屋は汚部屋。一方、仕事では過集中を発揮。これらは発達障害による特性でもあるという。

 

「高校卒業後に看護師になったものの、普通の人ができる仕事がまったくダメ。日当制で“今日は5万円の稼ぎだった”とか、わかりやすく自分の価値が見いだせるから、風俗業界に転身したんです」

 

同時期、40歳を過ぎていた桜壱さんは、風俗の体験ルポ漫画を連載していた。ふざけ半分で「セックスフレンド募集」と雑誌で呼びかけたとき、たった一人だけ応募してきたのが、×華さんだった。そこから夫婦の物語が始まり、×華さんは漫画家の才能を一気に開花させたのだった。

 

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