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今年の3月11日で東日本大震災から5年という月日が経ちました。震災はたくさんの人たちの生活を変え、また町の景色も変えました。道路や施設などのインフラ面での復旧はかなり進んでいますが、避難者数はいまだ17万人を超え、原発事故による風評被害は収まる気配をみせません。完全復旧まではまだまだ道半ばです。

震災が教えてくれたもの。それは命の大切さ。その命の源となるのが「食」です。去る3月4日、5日は、そういう命の源としての食について考える地元・東北の生産者や行政、そして全国の有識者による「東の食の実行会議」が福島で行われました。昨年に続き、私も参加させていただきました。

この会議は、東北の食の復興に向けて、地元の生産者に加え、復興の志を持つ産官学のプレーヤーが一堂に会し、机上の空論ではない具体的なアクションを生み出すための会議です。一昨年は宮城、昨年は岩手、そして最後の回となる今年は、福島での開催となりました。最終日は「東の食の道」と題したこれからの東北の食について目指す未来のビジョンが発表されましたが、光栄にもその文章化に関わらせていただきました。以下、共有させていただきます。

第1に、東北に来るたびに思うことですが、東北という町はなんだか懐かしさを感じさせる純粋さや素朴さがあります。それはおそらく東北の人々がシャイでありながらも、心はすごく優しいから。その思いやりに満ちた東北の人々の愛情深さを東北の食で表現することが大事だと思います。

第2に、東北は積雪も多く冬も長い。そうした過酷な状況の中で、自然と向き合う強さや、それを乗り越えるために必要な不屈の精神を東北のみなさんは持っています。東北の自然の厳しさは多種多様な種の豊富さとその強さを生み出したといわれています。特に東北には在来種が多く、根の力・地の力があります。それをリスペクトすることが大事です。

第3に、自然の贈り物としての食材に対する敬意を込め、里山・里海の原点として東北が作り出す「食による命の循環」を世界に広めていくことの大切さを感じました。

第4に、いまでも世界各地で果てしない対立や憎しみの連鎖として紛争が起きていますが、日本人は八百万の神への信仰を持っています。その対立を超えた共存共栄の心、そして山や海を守るという自覚を持つことが大事だと思いました。

第5に、世界各地の食の知恵を学び取り入れ、世界の食文化が行き交う交差点に、東北がなれば素晴らしいと思います。生活者、料理人、農家、漁師、食品代表、小売り業者、卸売り業者、研究者、教師、政治家など、食に携わる者が同志として、自己の利害を超えて分かち合うことで、東北の「食ブランド力」は大きく向上するのではないかと思いました。

生きる強さがあり、食の強さがあり、つながる強さがあるのが、いまの東北だと思います。この5年間、たくさんの方々が復興のために、志を一つにして全力で頑張ってきました。素晴らしいことです。いっぽうで、視察バスから眺める福島の町は、いまだに震災の爪痕がくっきりと残っているところもありました。今回の実行会議のように、これからも続く困難な状況の中、復興への長い道のりを覚悟しながらも必死に頑張っている人がいることに、私は大きな希望を抱きました。

最後になりますが、実行会議に参加した約150人のうち唯一の外国人でもある私を仲間に入れてくれたことに対して、関係者のみなさまへこの場を借りて深くお礼を申し上げます。微力ではありますが、これからも引き続き、復興活動に関わらせていただければと思います。

 

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