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日々にうんざりすることって多いですね。シングルファザーってまさに日々との格闘です。ずいぶん慣れてきたわけですが、息子が寝た後、やっぱりぐったりします。

冷蔵庫漁って、ビールとかワインをひっぱりだして、ふ~、やっと自分の時間。それでも、数時間後には朝ご飯の準備が始まります。いつまでもぐずぐずは出来ません。ま、しかし、10分でも自分の時間があれば、それはそれで有り難いわけです。パジャマに着替えて、キッチンの丸椅子に腰かけ、窓外の月とか眺めながら、お疲れさん、と呟き、自分にカンパイしています(笑)。

で、必ず唱える言葉があるんです。

「今日も、よく頑張ったんじゃないか? よく生きたんじゃないか? 昨日よりはちょっとマシになったんじゃないか? ヒトナリ、なかなかいい感じになってきたよ。あしたもその調子で頑張れ」

ってね。これ、ちょっと怖いですけど(笑)、一日の終わりに必ず自分を褒めるようにしています。馬鹿に出来ないですよ。家事に追われる人生の中で、本当の味方は自分だけなんですから。だから、せめて自分のことは自分で労わらなきゃ。自分を宥める、自分を褒める、自分を盛り上げる天才になるしかないんです。長い人生に勝つためには、毎日毎日をちゃんと区切って精一杯丁寧に生き切るしかありません。

シングルファザーの私は、そうしています。そうやって小さなカンパイを毎夜寝る前に繰り返し、次の日に備えているわけです。

私は屹立性貧血でよくぶっ倒れます。頭を打って手術もしています。親ひとりですからね、不安は無限にあります。

「神様、なんとか子供を育て切るまで生かしてください」

と日々、祈っているんです。

他人は頼れないです。最後は自分しかありません。いまさら他人に頼るつもりもないです。寂しい考え方かもしれませんが、でも、人生とはそんなもの。そんなものだと思っていたほうが、気楽にやれたりするものです。

さて今日は、まず自宅で簡単に作れるちりめん山椒をご紹介しましょう。そして、それを応用した贅沢ウニの生クリームパスタも作ります。

まず、ちりめん山椒から。ちりめんじゃこを沸騰したお湯で1~2分茹でる(塩気を飛ばし、軟らかくします)。丁寧に水切り。小なべに入れ、ひたひたになる量の味醂大3、酒を1カップ入れ、弱火で半分ほど煮つめたら、砂糖大1、ごま油少々、塩少々、醤油大2、山椒を適宜加え、味を調えていく。根気よく弱火で。汁気が飛び、照り照りになったら完成です。味や照りが不十分なら醤油や味醂で調整します。

続いてサーモンのタルタル。きゅうりの超小さなサイコロ切り(種の部分を避けて、歯ごたえ重視)、サーモンも同じように細かくカットし、香りづけに小口切りのねぎ少量、ボウルであえる。レモン少々、塩・こしょう少々、オリーブオイル少々、ごまを少々加え、とろみが出るくらいまで混ぜたら完成。

最後にパスタです。ウニ(瓶詰もの)小2、マヨネーズ小2、生クリーム60㏄、オリーブオイル小2、めんつゆ小2、塩少々、バター10gの入ったボウルにアルデンテに茹で上がったフェデリーニ(スパゲティのサイズ。ぼくはディチェコを使用)を入れ、あえます。

皿に盛り、その上にちりめん山椒を満遍なくちりばめ、真ん中にタルタルを添えて完成です。

絶品間違いなしの豪華和風パスタ。お友達などを招くときにお試しください。株が上がりますよ!!!

ボナペティ!

エッセイで紹介されたレシピは、
辻仁成 子連れロッカー「希望回復大作戦」ムスコ飯<レシピ>で公開中!

辻仁成/つじ ひとなり

作家。東京都生まれ。’89年「ピアニシモ」ですばる文学賞、’97年「海峡の光」で芥川賞、’99年「白仏」で、仏フェミナ賞・外国小説賞を受賞。映画監督、演出家としても活躍。現在はシングルファザー、パリで息子と2人暮らし。『息子に贈ることば』(文藝春秋)発売中です。

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