電力小売りの全面自由化に関する「電気事業法」が、6月11日に国会で成立した。これまで一般家庭では、電力を同じ地域の電力会社から買うものだったが、’16年からは電力会社を自由に選べるようになる。果たして電力自由化で、電気代は安くなるのか? 経済ジャーナリストの荻原博子さんに話を聞いた。

 

「電力小売りに参入する新電力会社は、この6月時点で244社あり、さらに増えると予想されます(資源エネルギー庁による)。各家庭では、これらの電気料金やサービスなどを見比べて、契約先を決めます。現状のまま、地域の電力会社と契約を続けることも、新電力会社へ乗り換えることも可能です」

 

’16年以降は、太陽光や風力などの再生可能エネルギーの新電力会社を選べる道が開けた。ただし、電気料金そのものは、’16年からすぐに安くなるとは断言できないという。

 

「当初は発電設備などに多額の投資が必要ですし、燃料費も高騰しています。たくさんの企業が成長し、自由競争を繰り返した結果、電気料金は安値で安定すると期待していますが、ある程度の時間は必要でしょう。消費者である私たちは、電気料金やサービス、エネルギー源などを判断材料にして、自分自身で見極めねばなりません」

 

電力の自由化は3段階で進んでいる。1、電力を広域で調整し、地域をまたいで融通するシステムを作る、2、電力の小売りの自由化、3、既存の電力会社が持つ発電と送電を別会社にする発送電の分離で、2までの実施が決まった。3段階のうち、3の発送電の分離がもっとも重要といわれている。

 

「送電網が開放されると、さまざまな業者が参入しやすくなります。そのいっぽうで、送電網の管理をしっかり行わないと、’00年ごろ、アメリカのカリフォルニア州で起きたような、大停電が頻発する恐れもあります」

 

ほかにも小さな新電力会社が、何かのトラブルで電気を充分に作れなかった場合、電気量が不足してやはり停電になる恐れもある。こうした場合に備え、電力会社間でどういう協力関係を築いていくかなどが、今後の課題だという。

 

「地震の多い日本では、原子力発電は安心できないと私は思っています。また、現在のように火力発電に頼っていると、燃料価格や原産国の情勢に大きな影響を受けます。日本は再生可能エネルギー産業を育てていくことが大切だと思います。今後、新電力会社から具体的なサービスや料金プランが発表されるでしょう。比較検討しながら、ご家庭の電力について考えてみてください」

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