受験生などが暗記するときに使うのが、メロディに乗せた「替え歌」を作ること。しかしなぜか、そこで使われる楽曲は、『アルプス一万尺』がダントツに多いという。いったい、どんな理由が?

 

ネットでちょっと調べただけで『アルプス一万尺』の替え歌暗記術は20個以上も見つかる。その内容は、元素の周期表、ドイツ語の定冠詞、歴代の総理大臣の名前などさまざま。

 

『アルプス一万尺』はもともと『ヤンキードゥードゥル』という題名のアメリカ民謡で、アメリカ独立戦争の際によく歌われていたものだった。

 

「この曲は、日本人が初めて耳にした西洋音楽のひとつ。ペリー提督が黒船で来航したとき、上陸に際しこの曲が演奏されたそうです。民族が初めて触れた外国曲というのは、記憶に残るんですよ」

 

そう解説するのは、作曲家の青島広志先生。青島先生によれば、明治以前に日本に入ってきた外国の曲には、今でも定着しているものが多いという。

 

「ペリーは、この曲を勇ましい行進曲として使ったようです。もともとアメリカ民謡としての歌詞があったようですが、はっきりしていません。このとき、すでに『替え歌』になっていたのです」(青島先生・以下同)

 

その後、曲には『アルプス一万尺』という題名と、日本語の歌詞がつけられた。しかしその内容は、原曲とはまったく関係ないもの(日本語の作詞者も不詳)。まるで、替え歌にされるために生まれたような曲だ。それにしてもなぜ、『アルプス一万尺』ばかりが暗記に用いられるのか?

 

「リズムが非常に軽い、軽薄といってもいいくらいの曲なんです。受験勉強は大変ですから、こういう軽い曲に乗せて覚えることで、少しでも楽な気持ちになろう、という考えが受験生や先生に働くのかもしれません」

 

ちなみに日本語の『アルプス一万尺』は、歌詞が29番まであるそう。そちらを覚えるほうが、替え歌を作るよりも難しい!

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