山口県萩市から北西へ約8キロ。日本海に浮かぶ萩大島で巻き網漁をする3船団の連合体が「萩大島船団丸」だ。ここでは、捕れたての魚を船上で箱詰めして直接販売する「鮮魚BOX」と、鮮魚を船上の潮風で干し上げる「船上一夜干し」の販売を手掛けている。

 

漁師たちは水揚げの状況を1日平均20件以上の顧客と電話やメールを使って船上でやり取りし、注文を取る。「鮮魚BOX」は、捕った魚を1匹ずつ「血抜き」して鮮度を保ち、箱詰めして発送。市場や仲買を通さず全国に直送される魚は、最短24時間で消費者の元に届けられる。手間暇かけた魚は、市場に卸す価格の約1.5倍だが、鮮度は抜群だ。

 

この事業計画を立て、萩の魚を宣伝し、販路を開拓し、第6次産業化を取り仕切った坪内知佳さん(27)は言う。

 

「なんで漁師の俺たちがこんなことせないかんのかと、愚痴られることもあります(笑)。萩大島、日本の食文化を守るのは1次産業者である私たちの役目。鮮度を保ったまま加工して消費者に届けるところまでやって、おいしい魚食を守り、魚の価値を高めることができるんです」

 

発注も漁獲量が変動するため、船上では漁師の頭の中にある顧客データが武器だ。漁師は水揚げされた魚を見て、その魚を欲しがる顧客を探し、船上で連絡を取る。漁師と顧客が密でなければ成り立たない販売方法だ。

 

「1匹のマアジがいつ水揚げされ、どの料理長の手に渡って、誰のおなかに入ったのか、すべてを追える最強の商売でしょう」(坪内さん)

 

漁師の松原三樹さん(38)は言う。

 

「漁の最中にも電話がきて正直大変。ただ顧客と距離が近くなって意識が変わってきた」

 

顧客からは直に「本当においしかった」という声も入り、やりがいも高まっているそうだ。

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