9月末、青森県十和田市にある三本木農業高校(三農)に続々と、愛犬を連れた人々が集まり始めた。動物科学科最大の行事「犬の祭典」だ。午前9時、高らかに開会を宣言した瀧口孝之校長(57)は、こう続けた。

 

「どうぞ愛犬と一日を楽しんでください。犬や猫たちの殺処分ゼロを目指した『命の花プロジェクト』の鉢上げ体験にも参加してください」

 

屋外のゲーム会場では、飼い主と愛犬によるいす取りゲーム、◯×クイズ、障害物ゲームなどが開かれ、場内は笑い声に包まれた。同時に、行われた「命の花プロジェクト」の鉢上げ体験の会場は、静かで、どこか厳か。

 

’12年4月に始まった三農の「命の花プロジェクト」。県の動物愛護センターを見学した動物科学科の生徒たちが、殺処分された犬や猫の骨が事業系廃棄物、つまりはゴミとして捨てられることに衝撃を受け、始めた活動だ。愛護センターからもらい受けた骨を、生徒たちが自ら砕き、肥料にする。その骨を混ぜた土に、花の苗を植えれば、遺骨は花という新たな命となって再生できる。そんな祈りが込められている。

 

鉢上げ体験とは、骨が入った土を、参加者自身が鉢に入れ、苗を植える作業のこと。この日、「命の花」30鉢が、「大切に育ててください」というメッセージカードを添えられ、手渡された。

 

「命の花プロジェクト」は’13年、日本学校農業クラブ全国大会で、参加332校中、最優秀賞に輝き、文部科学大臣賞もダブル受賞。今年は、日本動物大賞のグランプリに輝いている。

 

5月に開催された青森県動物愛護センターのイベントでも、生徒たちは「命の花」のPRと鉢上げ体験を実施した。この日、プロジェクトスタート時の顧問・赤坂圭一先生(41)が、愛犬とともに会場にいた。先生に立ち上げ時の話を聞いた。

 

「愛護センター見学は、以前からありましたが、’12年のセンターの担当者の一言がきっかけになったんです」

 

担当者は、犬の骨を手にして、涙ながらに訴えた。

 

「殺処分は税金で行われています。皆さんから集めたお金で、動物を殺しているんです。殺す前に、皆さん一人一人ができることはありませんか」

 

心にグサッときた。生徒たちも思いは同じだ。3日後、自分たちもアクションを起こそうと、皆で話し合った。「野菜農家で骨を肥料に使うところがあるそうだよ」と赤坂先生が言うと、生徒たちが口々に意見をいう。『鉢植えの花にして、動物たちの命をもう1度よみがえらせる!』と、意見は即座にまとまったが、始めてから直面したのが、骨を砕く作業のつらさだった。

 

「最初は単純に、骨を細かくすればいいと思っていました。ところが、サクサクという、骨をレンガで砕く音が、自分の犬を砕いているような気持ちにさせるんです……」

 

こうして「命の花プロジェクト」が始まり、今年で3年目。歴代の生徒たちは皆、殺処分の現場を見、衝撃を受け、涙しながら骨を砕いてきた。

 

愛護センターでの鉢上げ体験で、参加した父親が6歳の息子に語りかけていた。「土に混じる白いものは何かわかるか?犬や猫の骨だ」「うん。かわいそうなワンちゃんたちが花になって、生き返ってもらいたい」「命は巡り巡っているということだな」

 

三農の命の教育は、生徒たちのさまざまな活動を通して、地域を超え、世代を超え、巡り巡って広がっていた――。